短編
□time lost letter
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『time lost letter』
私は今まで、世界の終わりなんて考えたことがなかった。
たらたら、毎日続いて、君といられて、そのっ…けっ、結婚とかできたらいいなあ。
とか、考えていた。
ある日、ケータイを開くと、一つのメールが届いた。
「あなたの世界の終わりはなんですか?」
なんかのイタズラだと思ったのに、メールを返信しなかったから?それとも、誰かが返したから?
世界が急に壊れ始めたんだ。
なんか、国と国の争いとか、人と人の争いとか、人間と神様の争いとか…
その中で君と始めた手紙(メール)のやり取りは、ちょっとドキドキした。
いつかあの日、君が私の名前を綺麗だと言ってくれた言葉は、今でも覚えている。
「朱里(アカリ)の名字ってさ、珍しいけど、綺麗だよね。薄紅って。調べたけど、薄紅って色の名前なんだって。ピンクの綺麗な。
朱里にぴったりだよ。」
嬉しかった。本当に、嬉しかったの。
彼と始めた文通は、いつしか千を越えて沢山重なったよ。初めのメールは消えないように大切にしまって、毎日メールを送った。
それがある日、急に途絶えて君の言葉が聞こえない。沢山泣いて、沢山叫んだ。君の言葉が聞こえないから、前の言葉を繰返し読んでいると、失った手紙の時間が戻る。
それはあの手紙だった。
「あなたの世界の終わりはなんですか?」
私は今返信する。
届くかどうかわからないけど、今なら、分かる気がするから。
私はゆっくり、紡ぐ。
書き終えた私は、錆びたような赤い空を見上げて、涙を静かにこぼした。
「私の世界の終わりは―――――――。」
大好きな君がいなくなってしまったこと。
おわり