短編
□サユリの現実空想
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『サユリの現実空想』
私は外に出たことがない。白いなにもない部屋から出たことがない。
でも、あんまりにも退屈でよく考えるんだ。
外には何があるのかな?
白い部屋で考える空想は在り来たりなものばかりで、でも、在り来たりな平凡な日常を求めてばかりいる。外を唯一分かる手段は、白い部屋の小さな窓と、私の唯一の友達。
機械人形『人形の友達』シリーズ タイプi 個体番号黒番No.871812
個体固有名『花夜(カヨ)』
この子だけが友達、外を知る者。
みんな型式番号で呼ぶけどね、私は名前で呼ぶ。だって、この子には感情があった。笑って楽しんで、感情を考えることができる。
大事な友達。
以前に、あの子…花夜が言ったこと…
「小百合(サユリ)様、あなたは自分が閉じ込められているとわかっていますか?扉は開いています、逃げないのですか?」
わかってる、でもね私には扉がわからないの。
花夜は分かるけど私にはわからない。だって私は現実さえも空想にしているから。
本当の現実は残酷で、沢山の機械に繋がれて世界のエネルギーになっている。
沢山ありすぎて、扉なんてわからないわ。
でも、もうおしまい。
あの手紙が全て壊してくれた。
「あなたの世界の終わりはなんですか?」
私は返信した。
すると、世界が、空に逃げたこの箱庭が、下の赤く濁った青い星に落ちた。
痛みは感じない。
ただ、解放される喜びに酔っていた。
私の、サユリの現実空想はこれで終わりに出来る。
「あなたの世界の終わりはなんですか?」
そんなの決まってる。
私の世界の終わりは、自由がないこと。
こんな世界は終わればいい。