短編

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-どこまでも続く空を眺めていた-

公園のベンチに座りながら、ただぼけーっと青空を眺めていた

「ねぇっ、そこの青空眺めてるお兄さーん!」

「あ?」

青空を見たまま、声に答えた

「青空眺めてばかりで飽きなーいっ?」

ギシっとベンチが軋む音がした
ふと軋んだ音がした側に目をやると男が座っていた
そして俺と同じように青空を眺めはじめた

俺も青空に視線を戻して答えた

「別に飽きねぇけど…」

「僕、もう飽きちゃったー!」

(まだ二分経ったか経ってないかだろ、何こいつ早くね飽きるの)

突っ込みたくなったが口に出すのはやめておいた
馴れ馴れしく話し掛けてくるような奴だ
下手に相手してみろ、絶対に調子に乗ってもっと絡んでくる

「お兄さん、コーヒーいる?
あそこの自販機で、さっき買ったんだけど二個出てきちゃったんだよねー
僕、一個で良いしあげるっ」

はい、とコーヒーを差し出してきた
俺は差し出されたコーヒーを受け取った

「…」

男は此方を見て何かを待ってるようだった

「…何?」

「ありがとうは?
人から物を貰ったら、ありがとうって言うんだよーっ」

「受け取ってやったんだ、有難く思え」

「受け取らせてやったんだ、礼を言うのっ」

男はむーっと頬を膨らませていた

「どうも有難うございました。有難く飲ませていただきます。」

「ちょ、思い切り棒読みじゃんよ」

クスクス笑っていた

「何が面白かったか知らねぇけど、お前さっきから何なの?」

「えっとねー、ただの暇人!」

シレっと男は答えた

「あ、そう」

「お兄さんも暇そうだったから話し掛けてみちゃった」

「そうか」

「本当は1人で時間潰しても良かったんだけどねーっ」

「1人は楽だからな」

「うん、楽だよね
本当、気疲れしなくて済むよねー」

そう言う男の横顔は寂しさが滲み出ていた
多分、本当は1人が嫌いなんだろう
俺とは真逆な人間だ

「…1人が好きなのに、暇そうな人間が居たからってわざわざ話し掛けてきたのか?」

「そうだよ、たまには良いかなって」

「たまには…か」

「何か言いたそうだね、お兄さん」

「お前、1人嫌いなんだろ?
だから誰かと関わりを積極的に持とうとする」

「何…言ってんの」

男はクスクス笑った

「現に今、動揺したろ
それに1人が良いだの何だの言ってる時に自分が寂しそうな顔してたの気付いてねぇのか?」

「っ…」

「図星…か」

「そうだよっ、1人が嫌いって可笑しい?」

嘘を見抜かれて拗ねる子供のようだった

「別に可笑しくねぇよ
人間なんて、そんなもんだろ」

「お兄さんも1人が嫌い?」

「あー、いや別に」

嘘じゃない
現に1人で居る方が気分が良い
誰かに合わせて、合わされて時間を共有する
そんな事をしてまで1人の時間を減らそうする奴の気が知れない

「お兄さんは強いんだねー…
僕は弱いから1人は無理だよ」

「…」

「僕はね、人に嫌われたくない
嫌われるのが怖くて仕方ないんだ
孤立していくのが怖いんだよ、僕」

男は今にも泣きそうな顔をしていた
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