きっちんたいまー

□料理人の愛とプライド
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夜空には仄かに霞む朧月。

○○○はひとり、甲板で暗い海を見ていた。

考えまいとすればするほど、頭の中に蘇ってくるのは昼間見た情景。



―ナギと酒場で親しげに話す女の顔―



怖かった。

「あの人は誰?」

たったそれだけのことが、どうしても言えなかった。

ナギとの日常が、二度と戻って来なくなるような気がして。

必死で感情を押し殺し、零れそうな涙を拭い、普段どおりにナギに接した。

なのに少しずつ歪みが大きくなっていく。

心のどこかでナギを信じ切れない自分がいるのが、辛い。

「…どうすればいいんだろう」

そっと月を仰いだ時だった。



「なあ、お嬢ちゃん。俺達と遊んでくれよ」

「えっ?」

そこには足音を忍ばせ近づいてくるごろつきの姿。

「海賊船に女ひとりっつーのはそういうことなんだろ?」

「俺達のことも慰めて欲しいなあ」

一人、二人…その姿は増えていく。

「なっ…」

「シリウスのお宝と一緒にコイツも貰って行こうぜ」

ニヤニヤと笑いながら近づいてくる男。

「いやっ!ナ…」

ナギに助けを求めようとした。

だが酒場でのことが頭にちらつき、一瞬それを躊躇わせた。

「その顔がまたソソるな」



ビリリーッ



男の大きな手が○○○の服にかかり、一気にそれを引き裂く。

「いやぁぁぁぁぁぁ」

「ハッハッハ…もっと鳴け、もっと抵抗しろよ」

臭い息が顔に吹きかけられる。

手足を拘束され、恐怖で頭が真っ白になっていく―。



パァーーーーーーンッ



甲板に響く銃声。

「チッ。汚ねぇ手をどけろっ。そいつに触るな」

シンが怒気を孕んだ声で唸った。




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