レシピ集
□雨 〜シン√ver.〜
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シンが高熱を出した。
どうやらこの風土特有の病気に罹ったらしい。
ドクターが懸命に治療にあたっているのだが、シンの様子は芳しくない。
発熱で体力は消耗し、食べ物も一切受け付けてくれないのだ。
○○○の姿は傍で見ているだけでも痛々しい。
思わず病気のシンを責めてしまいそうだ。
「お前のせいで○○○が辛い思いをしているんだぞ」
と。
シンが熱を出してから5日目の朝、○○○が決心したように船長に告げた。
「フェールス島に向かってください。おじいちゃんが昔、話してくれた幻の薬草を探したいんです」
誰も異論を挟む者はいなかった。
それだけ○○○の思いは強く激しかったのだ。
「ナギ、○○○に付いてやってくれ」
船長にそう頼まれ、○○○と共にフェールスの地を踏む。
まるでジャングルのようだ。
いつもの○○○なら怖気づいたかもしれない。
だが今日の○○○は、信念に赴くまま力強く森へと歩いていく。
いや…何かに導かれるように、と言った方がいいのかもしれない。
島に着いた時は快晴だった空が、突然泣き出した。
大粒の雨が俺たちの行く手を阻もうとしている。
俺は○○○の腕を引っ張り、引きずるようにして大樹の根元へと走った。
一刻も早く薬草を探したかった○○○には不本意だっただろう。
それでも文句は言ない。
ただ無理矢理走らされているといった風情だが。
俺は○○○を庇うようにして木に手を付いた。
「!!ナギさん!濡れちゃいます!」
○○○が焦ったように言う。
「通り雨だ・・・いいから、じっとしてろ」
「でもっ!」
「・・ふっ、お前に風邪ひかれたらシンの奴がうるせぇからな」
シンの名前が出たせいか、○○○が急におとなしくなった。
まるで小動物のような○○○が今、俺の腕の中にいる。
その小さな体を抱きしめたい俺とぐっと我慢する俺が、ひとつの体の中でせめぎ合う。
ああ、これは拷問なのか?
俺はいつそんな罪を背負ったのだ?
愛した女が仲間の想い人だった。
ただそれだけだ。
それなのに俺は、身を焦がし、裂かれるような思いをしなくちゃいけねぇのか?
胸の鼓動が高まる。
もう少しだけ、もう少しだけ…こうしていたい…。
byムーンさん(月のしずく)
「ナギさん!雨が上がったみたいです」
「ああ、そうだな」
俺は名残惜しい気持ちを気づかれないよう、そっと体を離した。
「早く薬草を見つけて、シンさんに飲ませなきゃ」
独り言のように呟いて、小さくうなずく○○○。
こんなに近くにいるのに、お前の瞳に俺は映らねぇ。
そんなにシンのヤツがいいのか。
このまま○○○をさらってしまいたい。
シンの手の届かねぇところに。
それでも俺がお前の目に映ることはないんだろうな…。
胸を締め付けられる息苦しさに、俺はひとり天を仰いだ。
end
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「!!ナギさん!濡れちゃいます!」
「通り雨だ・・・いいから、じっとしてろ」
「でもっ!」
「・・ふっ、お前に風邪ひかれたらシンの奴がうるせぇからな」
★この4つのセリフはムーンさんのものです。
そのまま貰ってきましたw
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