レシピ集
□雨 〜ソウシ√ver.〜
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「お前ら、シリウス海賊団だな」
一人の男が発した声に引き寄せられるように、次々と銃を持った海軍が集まってきた。
「男に囲まれても面白くねぇな」
リュウガがブツブツと呟いている。
「こんな雑魚早く片付けよーぜ!」
ハヤテがうれしそうに指を鳴らす。
「○○○ちゃんは危ないから私の後ろに隠れて」
「はい」
「よし、野郎ども、やっちまえ」
「アイアイサー!」
リュウガの鬨の声に船員達が海軍へと向かっていく。
ナギの鎖鎌が、シンの銃が。
ハヤテの剣が、ソウシの手刀が。
次々に敵を倒していく。
自分達の劣勢を見て取ったのか、○○○を人質にしようと海軍が銃を構えた。
「危ない!」
ソウシが○○○を庇ったのと銃声が発せられたのは、ほぼ同時であった。
○○○の目の前で、ゆっくりとソウシが倒れていく。
「いやあ!ソウシさん!!」
駆け寄った○○○にソウシが柔らかく微笑んだ。
「私は大丈夫。かすり傷だよ。それより…ナギ!」
ソウシは一番近くにいたナギを呼ぶ。
「○○○ちゃんを連れて逃げるんだ」
「わかりました」
ナギはソウシの側を離れようとしない○○○の手を引っ張った。
それでも動かない○○○を、ナギは抱き上げ肩に担ぐ。
「ドクター…」
「ナギ、頼んだよ」
船員達は、ナギが逃げやすいよう海軍に戦いを挑んでいった。
「いやっ!降ろして、お願い。ナギさんっ」
「……」
肩の上で暴れる○○○をしっかりと押さえ、ナギはひたすら走った。
信頼する大事な仲間の想い人を助けるために。
ポツッ…ポツッ…
どんどん強くなっていく雨足が、ふたりの体を濡らす。
ナギは枝葉の茂った樹の下に○○○を降ろし、逃げないように体で覆った。
byムーンさん(月のしずく)
「ナギさん、お願い。ソウシさんのところに連れてって」
「ダメだ」
「どうして…」
「お前はドクターから預かった。今、危険に晒すことはできねぇ」
○○○は絞るような声で答えるナギの顔を見上げた。
その顔は歪み、とても辛そうだ。
本当なら大切な仲間のために先陣を切って戦いたかったのだろう。
しかしそれができない歯痒さと、ソウシとの約束の狭間で、一番苦しんでいるのはナギに違いない。
それがわかって○○○は唇を噛み締めた。
「ごめんなさい。ワガママ言って…」
「お前はここにいろ。俺が必ずドクターを助ける」
ナギは○○○にそう告げると雨の中を戻って行く。
○○○は、ナギの背中に深々と頭を下げた。
end
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