大宮story(パロディ)

□離さない
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台風を思わせる。

そんな激しい雨風が吹き付ける。



こんな寒い中、久々に見た

愛しいアイツと3ヶ月前まで一緒に暮らしていたマンション。

今でもあいつが住んでいるはずの部屋の前で

部屋の主が帰ってくるまで待ってみよう。






しばらくすると、エレベーターの到着音が聞こえ、

廊下の向こうに、エレベーターから出てきた


この部屋の主

3ヶ月ぶりに会う愛しいアイツが帰ってきた・・・。




久々に見たアイツは、この雨の中買い物に行っていたのだろうか、

ふたつも買い物バックを持って、

びしょ濡れになって帰ってきた。

かくいう俺もかなり濡れているんだが・・。



まだ俺には気付いていない様子。

こちらに向かってあるきながら、

肩からずり落ちそうになったバッグを肩にかけなおしながら伏せていた顔をゆっくりとあげた。




目が合う。






一瞬、






時が止まる。






驚いたように立ち止まった彼。
彼が今掛けなおしたばかりのバッグが肩から
ずり落ちた。



そして驚いたように、
人より少し潤んだ、色素の薄く
薄茶色いくりくりとした瞳を見開いた。


そして、上げたばかりの顔をまた伏せ、少しずつこちらに向かって歩いてくる。


俺もまた、彼に向かって歩き出した。



彼が目の前に来たとき。二人とも同時に立ち止まる。



彼は、声を震わせ

「お、かえ・・・り・・・。」
と、戸惑いながら言った。

そして、顔を上げ、いつものように





「智。」







と、俺の名前を呼んだ。
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