BASARA 長編

□あの日の約束(後)
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   ***

「いた…」     「久しぶり。」

「お前…生きてたんだな。」

「なんとかね」

「そうか…。なぁ、ここで話すのも何だ。邸に来いよ。もてなすぜ」

「ううん。いいよ。」

「Ha?何でだよ。」

「だって、武家屋敷に平民をあげるなんて独眼流の名が泣くよ?」

「そんな誰が決めたかもわかんねぇ決まりに縛られる方が情けねぇ!」

「でも」

「Shut Up!行くぜッ!」

「ちょ…うわっ!」

無理やり自分の後ろに乗せ馬を走らせる。

「早っ…!」

政宗にしがみつく娘の腕に、僅かながら違和感を感じた。



――――――――ガヤガヤ



「・・・・」

「おい!こっちに裂酒回せ!」

「こっちも足りねぇんだよ!」

「るせぇ!今日は無礼講だぞ〜!」

「・・・・」

「どうした?食事が進むまねぇな?」

「いや…伊達軍ってこんななの?もっとお堅い所かと…」

「だったのだが、政宗様が家を継いだ途端このような状態に…」

「Ha?残念そうに言うな小十郎ッ!」

「アハハハ!」

娘が笑い、釣られて笑う。

それを見て家臣たちも笑いだした。

笑顔に包まれた邸。

「アハハハ…!」

「  おい、少しいいか。」

「?」





   ***

「貴方が『片倉小十郎』?」

「あ、あぁ…。何故名前を?」

「政宗がよく喋ってた。いつも小言が多くて面倒だ。って」

「はぁ…。」

「でも、自分の事を見てくれる唯一の、最高の従者だって。」

「…そう、か…。」

「…うん。で、何の用?」

「あぁ。お前に聞いてほしい話がある。」

「何?」

「昔の、一揆での話だが、政宗様はお前のいた村を焼き払おうなど 「わかってるよ。」

「え?」

「政宗が…そんなことするはずない事くらいわかってる。

 あの時、それに気づいてれば…ッ!…ゴメンッ!」

「…いや。   あれは政宗様の母上の陰謀だった。政宗様に伊達家を継がせないために、

 あの方と深い関わりを持つお前の存在を恐れ、消そうとした。そのためにあのような事を…。

 俺が刺客に気づけなかったのが、いけねぇんだ。」

「母上、か…。その人は今?」

「死んだ。」          「そっか。」



――――――――――ザァ・・・・・



「ん?雨が降り出したな。」

「本当だ…痛ッ…!」

「どうした!?」

「いや…別に…!」

「嘘つけ、見せてみろっ」



――――――――――スッ



「これは…」

「うん。

                義手だよ。」

「そんな…ッ。これは、あの時の傷…!?」

「…そう。斬れどころが悪かったみたいでさ。肘からしたが動かなくなっちゃって。

 だから切り落としちゃった。これって雨の日軋むんだよねー!」

「        悪い…」

「なんでお前が謝るのさっ!      でも、政宗には言わないでね。」

「   …あぁ。」

雨は降り続ける。

2人のいる部屋の外、血がにじむほどに唇を噛みしめる

片目の男。
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