BASARA 短編

□身分
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「おい舞月」

「はい。」

「これを政宗様の所へ持って行ってくれ。絶対に傷付けるなよ」

「はい。片倉様。」

此処に仕えるは一人の少女。

以前はこの奥州に住むただの村人であったのだが、戦に巻き込まれ両親を失い

孤児になった所をこの伊達家に拾われた。

よって今はここで、使用人として働いている。

「では。」

一礼して自室をでる。

「まったく…未だに心開かず、か」





   ***

「失礼します」

「Ah?何だ?」

「片倉様から物をお預かりいたしました。伊達様にお渡しするよう申しつけ…」

「おいよせよ、堅苦しいのは小十郎だけで十分だぜ」

「ハ、失礼しました。では、ここに置かせて頂きます。」

「おい」

「何でしょうか」

「その、伊達様って止めてくれねぇか?まわりは筆頭で通ってる。」

「お言葉ですか、私は武士ではございません。ただの使用人でございます。

 私がそのようにお呼びするのは少し御無礼でございます。」

「そんな事ねぇぜ?」

「いえ。それでは失礼いたします」

少女は一礼し、静かに部屋を出た。

「ふぅ…Cool過ぎるぜ」





   ***
「おぉい!舞月ー」

「どうかいたしましたか?良直様」

「様付けなんてよせや!っそうだ、これ直して欲しくてよ」

「これは?」

「あぁ。俺の戦用特攻服!なんだけどよ、前に切っちまって」

「…」

「どうした?」

「あ、いえ。かしこまりました。少々お待ち下さいませ」

「おう!ヨロシクな!」

「(戦…か。)」





   ***
「出来た…」

外はもう暗くなっていた。

厚い生地でできている服を直すのに時間がかかってしまった。

「部屋の前に置いておけば大丈夫かな…」

良直の部屋に向かう途中…

「キャアっ!」

いきなり何かに肩を掴まれ悲鳴を上げた

「Shut Up…」

「まさむっ…伊達様っ!」

「ん?」

「いえっ…!」

「ハハッ。いつも静かなお前が驚くとはCuteじゃねぇか」

「スミマセン…暗いのは苦手で…」

「知ってるぜ」

「…」

「舞月…?」

「…!?  あ、その、伊達様はこんな時間に何をしておられたのですか?」

「あぁ…。小十郎らと軍議を、な」

「そうでございましたか。では、今暖かい茶を入れますので、お待ちください。」

「そうか、2杯持ってきてくれ」

「?かしこまれました」





   ***
「お待たせいたしました。」

「おう。此処座れ」

「はぁ。あの、何故2杯なのですか?」

「Ha?お前の分だよ」

「私めなどが伊達様と一服など…」

「いいから。嫌なら命令だと思ってくれていい」

「…命令、なら」

「…あんま、『命令』なんて使いたくないんだけどな」

「…伊達様、今日は冷えます。もう中へ」

「おい、どうして俺がお前を此処に置いたか、わかるか?」

「ッ…伊達様が、お優しいお方で、天涯孤独の私に同情して下さったから、だと…」

「No…そうじゃねぇッ…」

「では、わかりません」

「おい!」

「どうしたのですか?政宗様」

「何でもねぇ…」

「…では、伊達様、おやすみなさいませ。」
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