BASARA 長編

□あの日の約束(後)
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「まったく…あんな目した奴に止めろなんて言える訳ないじゃん…」

その後、少し外を眺め、タオルを取り換えたり、風邪を送ったりして部屋を出ようとした時

何かに裾を引っ張られた。

「ん?  政宗…?」

眠ったまま政宗の裾を掴んでいた。

「ハァ…。これじゃ動けないでしょ…」

仕方なくその場に座り込んだ。

「ふぅ…」




   ――――

「・・・ん?畜生、小十郎に遅れをとるとは…俺とした事がッ」

「あれ?政宗?」

「俺は、どれくらい寝てた?」

「起きたんだ。頭痛は平気そう?」

「(会話がかみ合わない…)」

「今タオル取り替えるから」

「おい、待てよ」

「ちょっと待っててね」

「Wait…!(何でだよ…俺の声が聞こえてねぇのか?)」



「ねぇ…何で話してくれないの?」

「違う…そうじゃねぇ。」

「そうやって、また約束から逃げるの?」

「約束…」

「私の名前の事は忘れた?」

「そんな事は一度もねぇ!」

「そうやって黙ってるんだ。もう、私は、もう蒸発しちゃうのに。」

「おい!待てよ話を…」

「政宗様は、そういう人だったのですね…」

「俺は…約束を守れなかったが忘れた事はねぇ!」

「もういいよ。さようなら。」

「待て…」

   ――――




「まて…   舞月・…」

頭のタオルを取り替えて政宗の横に座る少娘。

その穏やかな表情に

「夢、か…」

「そうだね。だいぶうなされてたよ。大丈夫?」

「…って、俺の声聞こえるか?」

何バカな事言ってんの、と笑う娘の裾をギュッと握ってる自分の左手を見て

「わっ…悪ぃ」ととっさに手を離しながら、態勢を起こした。



「           舞月」

「え?」

「舞月。お前に渡そうと思ってた名だ。約束、遅くなって悪い。」

「舞月・…」

復唱して後ろを向いてしまった。

「不満か…?」

「こっち来ないで。」

「Ah?」

「もう…泣き顔は見られてくないから。

                            ありがとう。」

「       いや、こんなに待たせて悪かったな。Sorry…」

「うぅん。約束守ってくれて嬉しかった!」

「…あぁ」

「ふふ…何でこんな状態で言ったのさ。格好つかないじゃん。」

「これ以上待たせたら、お前が蒸発するかもしれないぜ?」

「何の話?」

「いや?   そういや小十郎は?  「蚊がッ!」     「痛ェ!」

「あ、大丈夫?」

「何すんだ急に…」    「いや?」

きっと小十郎が独り松永討伐に行ったなんて言ったら

きっと政宗はすぐに応援に行くだろう。そうなればこの奥州が危うくなる。

だがそんなの聞く耳持たずで行ってしまう…と考えた舞月は小十郎の事は伝えないでいようと決めた。

「さ、もう少し休みなよ?」
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