BASARA 短編
□駒
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あの人はいつもそう。
あの人の区分は『自分と自分以外』。
周りの人は皆『駒』。
そう、彼はとても孤独な人――――・・・・
***
「行けッ!我が駒達よッ!」
「はッ!」
「行くぜ野郎共ォ!」
「オォ!兄貴ィ!」
此処は戦場。西海の鬼・長曾我部元親と、我が主、毛利元就。
正直、主に心から忠誠を誓える者は少ない。
誰だって家臣を駒扱いしかしない人の為に大事なものを捨ててまで命をかけたくない。
でもそれは、この土地に生まれた者の因果。それはもうしょうがない事なんだ。
だから皆仕方なく毛利軍の『駒』になっている。
でも、私は違う。私は好きで此処にいる。
彼は…本当は優しい人だから―――――・・・
―――
『松寿丸ー!』
『何だ』
『あのね!あの…ギャッ!』
『おい、大丈夫か舞月』
『エヘヘ〜…』
『おい、鼻から赤いのが出てるぞ』
『えッ!』
『ほら、これで拭け』
『ありがとう松寿丸ぅ』
『あぁ』
『松寿丸はいいの?家に帰らなくて』
『構わん。どうせ居場所など無いのだから…』
『…』
『松寿丸』
『?』
『松寿丸が大きくなって家督を継いだら、私を、家来にしてね!』
『その時まで舞月が生きていて、使えそうだったらな』
『うん!私頑張るから! 約束だよ!』
『あぁ…』
―――
***
「夜翔様ー!」
「どうしたの!?」
「それが…このままでは圧倒的に長曾我部軍の優勢かと…」
「だよね…一応元親様にかけ合ってみるけど…」
「はい…期待はしません。」
***
「あの…」
「何だ」
「やはり海上では不利かと…。このままでは無駄に兵を削るだけです。一旦撤退しましょう」
「…」
「元親様 「黙れ」
「…」
「いくら側近とは言え我に命令するでない」
「…すみません」
「おーおー、そんな一生懸命な部下に冷たく言い放たなくても。なぁ?」
「いえ…」
「黙れ。貴様には関係のない事だ」
「相変わらず固ェ野郎だ」
「長曾我部よ、今日こそ決着をつける」
「そうもいかねぇ」 「?」
「どうやら東から豊臣軍が攻めて来てるらしくてな。お前さんも気をつけろよ」
「待てッ!逃げるのか!」
「決着は延期だなぁ!」
そう言って自分の船に乗り込み帰って行った。
「…チッ」
「元就様」
「その呼び方は止めろといった筈だ。夜翔」
「す、すみません。」
「…」
「…っ」
***
別に。自分が不憫だとは思わない。
不憫なのはあの孤独な元就だ。
いつから彼は歪んでしまったのだろう
「夜翔」
「はい」
「包帯を持って我の部屋に来い」
「はい」
「(いつの間に怪我を?)」
元就は私にしか怪我の手当てをさせない。
それは、私が誇れる事。