BASARA 短編
□駒
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「失礼しまーす」
「…左腕だ。」
「はい。」
この人は、人を駒だのなんだのと使う割には、自分も無茶をする。
特に相手が長曾我部様との戦いの時は。
「…これで大丈夫ですか?」
「あぁ」
「では失礼します」
「…」
「元就さ…毛利様、私ならまだしも、他の方には一言礼を言ってくださいませんか?
それだけで嬉しいものですよ?」
「駒にいう礼などない」
「へぇ…。そうですか。じゃ、失礼します」
***
それから2日経った。
「夜翔様ァ!」
「どうしたの!?」
「東の陸より、豊臣軍が…!」
「えっ…!(長曾我部様の言った事は本当だったんだ)」
「わかった。毛利様には私から報告する。」
「お願いします」
***
「毛利様ッ!」
「何だ。騒がしい」
「東の陸より豊臣軍が」
「わかっている。我が山猿の動きも把握していないと?」
「いえ…」
「これより防衛線を配置する。皆の者を配置につかせよ」
「ですが、兵はこの間の戦でかなり消耗されております。ぜひ長曾我部軍に援軍を」
「五月蠅いッ!あのような賊に手など借りぬッ!」
「…」
「分かったら行け」
「は…」
駄目だ。きっと何を言っても無駄だ。でも、兵の数は全然足りてないし…
「私も前線出るか…」
側近として、失格だ。
***
『兵はこの間の戦でかなり消耗されております。ぜひ長曾我部軍に援軍を』
「・・・」
兵の数で負けている事はわかっている。だが相手には豊臣も竹中もいない。
「夜翔、我も前線に出る。貴様は後ろで援護をしろ」
…いつもの返事がない。
「聞いているのか、夜翔」
姿が、ない…?
「おい」
「え?はい」
「夜翔は何処へ行った。」
「夜翔様なら今回は前線に立たれるらしく、既に出られました。」
「何?あやつがか…?」
「はい」
「予定を狂わせおって…ッ!」
胸がざわつく…これは怒りからくるものだろう
「…我も行こう」
ふん、何をこれくらいで取り乱している。
たかが駒の一つごときで。
――――・・・駒、如きで…
***
「ふんッ!」
返り血を浴びるのは好きじゃない。気持悪いし。血に慣れていない私は兵には向いてないと思う。
そんな私なのに、あの約束を守って家来にしてくれた元就には感謝している。
「さて、もうひと踏ん張り!」
「あっ!危ない夜翔様ッ!」
「え…ッ!」
――――――バサッ
「嘘…」
大量の返り血を浴びてる
「あれ…?」
返り血
じゃない
「痛いよ…」
やられたんだ
「(刺されたのかな、斬られたのかなそれとも、射抜れたのかな…)」
駄目だ…意識が、薄れてくる…
『舞月!』
「(元就…?)」
「おい!しっかりしろッ!」
「あれ…毛利様…?」