BASARA 短編

□駒
2ページ/3ページ

   ***

「失礼しまーす」

「…左腕だ。」

「はい。」

この人は、人を駒だのなんだのと使う割には、自分も無茶をする。

特に相手が長曾我部様との戦いの時は。

「…これで大丈夫ですか?」

「あぁ」

「では失礼します」

「…」

「元就さ…毛利様、私ならまだしも、他の方には一言礼を言ってくださいませんか?

 それだけで嬉しいものですよ?」

「駒にいう礼などない」

「へぇ…。そうですか。じゃ、失礼します」





   ***

それから2日経った。

「夜翔様ァ!」

「どうしたの!?」

「東の陸より、豊臣軍が…!」

「えっ…!(長曾我部様の言った事は本当だったんだ)」

「わかった。毛利様には私から報告する。」

「お願いします」





   ***

「毛利様ッ!」

「何だ。騒がしい」

「東の陸より豊臣軍が」

「わかっている。我が山猿の動きも把握していないと?」

「いえ…」

「これより防衛線を配置する。皆の者を配置につかせよ」

「ですが、兵はこの間の戦でかなり消耗されております。ぜひ長曾我部軍に援軍を」

「五月蠅いッ!あのような賊に手など借りぬッ!」

「…」

「分かったら行け」

「は…」

駄目だ。きっと何を言っても無駄だ。でも、兵の数は全然足りてないし…

「私も前線出るか…」

側近として、失格だ。





   ***

『兵はこの間の戦でかなり消耗されております。ぜひ長曾我部軍に援軍を』

「・・・」

兵の数で負けている事はわかっている。だが相手には豊臣も竹中もいない。

「夜翔、我も前線に出る。貴様は後ろで援護をしろ」

…いつもの返事がない。

「聞いているのか、夜翔」

姿が、ない…?



「おい」

「え?はい」

「夜翔は何処へ行った。」

「夜翔様なら今回は前線に立たれるらしく、既に出られました。」

「何?あやつがか…?」

「はい」

「予定を狂わせおって…ッ!」

胸がざわつく…これは怒りからくるものだろう

「…我も行こう」

ふん、何をこれくらいで取り乱している。

たかが駒の一つごときで。

――――・・・駒、如きで…





   ***

「ふんッ!」

返り血を浴びるのは好きじゃない。気持悪いし。血に慣れていない私は兵には向いてないと思う。

そんな私なのに、あの約束を守って家来にしてくれた元就には感謝している。

「さて、もうひと踏ん張り!」

「あっ!危ない夜翔様ッ!」

「え…ッ!」



――――――バサッ



「嘘…」

大量の返り血を浴びてる



「あれ…?」



返り血

じゃない

「痛いよ…」



やられたんだ

「(刺されたのかな、斬られたのかなそれとも、射抜れたのかな…)」

駄目だ…意識が、薄れてくる…

『舞月!』

「(元就…?)」

「おい!しっかりしろッ!」

「あれ…毛利様…?」
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ