短編

□君の小ささ
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なあ、そろそろ休んでもええんちゃう?
いつもボロボロになって帰ってくる彼女にそう声をかけたいけど、あの強い意思を持った目を見るとそんな言葉言えへん。
国民は自分のために頑張ってる。だから自分も国民のために頑張るんやって言って、自分の仕事だけでもホンマはいっぱいいっぱいなんに、国の俺らが普通はやらない仕事をやったり、困っている国民には片っ端から手を差し伸べる。
戦争が起こった時は最小限の犠牲で済む作戦を自らが立てて先頭を切ってその戦争に挑む。
いくら国民がいる限り死んだり消滅することのない国だからといってちょっと頑張りすぎや。



『…なんか顔についてる?』
「傷だらけやん」
『ただの擦り傷だよ』
「***は女の子なんやから顔に傷作っちゃあかんで?手当するからこっちき?」



笑って大丈夫なのにという彼女の手を引いて椅子に座らせ、ちょっと強引に手当していく。
手足にあった傷も全部手当し終えて、終始無言だった彼女の顔を見る。
するといつもクリクリと大きな目は伏せられとって涙が浮かんどった。



「え!?どないしたん!?傷痛い?」



左右に2回振られる首。



『…なんでもない、ありがとスペイン』



ゴシゴシ服の袖で涙を拭って俺に笑顔を見せる。



「…ちゃうよ、***。俺はこんな笑顔は見たないねん」



俺の言葉にえ?と言葉を零す***を抱きしめる。



「そんな心から笑えんくらい色んなもの溜め込んどるん?ちょっと息抜きせんと***やのーて***が壊れてしまうで?」
『大丈夫だよ?まだ頑張れ・・・』
「もういっぱい頑張っとるやん。みんな知っとるで?ちょっと休んでも***を咎める人なんて誰もおらんよ?」
『……』
「それに今みたいな元気ない笑顔国民に見せてみ?いくら***が国民のために頑張っても元気ない***見たら不安になってまう。だから国民のためにちょっと休み?」



な?といって両手を広げるとありがとうって小さく呟いてそん中にすっぽり収まった。
ぎゅっと優しく抱きしめると、国やからやつれるとかはないけど元々細いのが余計細く感じて***の小ささがよくわかる。
普段からもっと親分のこと頼ったらいいのに、限界まで頑張りよるもんなぁ。
よおこんな小さい体で国なんて大きなもんしょっとるわ。



「・・・***?寝てもうたん?」



しばらくして規則正しい寝息が聞こえてきた。
ずっとこのままで居るわけにもいかないので***を起こさないように静かにベッドに運ぶ。



「ゆっくり寝て疲れ取りー?」



そして俺に***のとびっきりの笑顔見せたってな。



「おやすみ***」




 


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