短編

□文化の壁は厚いです
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昼下がり、ちょっと散歩にでも行こうかと家を出た。
しばらく歩いたところで偶然フェリを見つけると、フェリも私に気づいたようで「ヴェ〜」とお決まりな効果音(?)を発しながら近づいてきた。



『狽ネ、何いきなりっ』
「何ってあいさつだよー」



どうしても慣れないあいさつ代わりのハグの習慣。
そんな習慣がない日本育ちの私は毎度毎度されるたびに心臓が飛び出しそうになる。
それをこの生粋のイタリア人は・・・



「あれ?***真っ赤ー」



なんてヘニャと笑う。
「うるさいなぁ」と口に出そうになったけど、その笑顔に飲み込まれてこっちまでつられて笑っちゃう。
でもフェリはふっと不安そう・・・というか不満そう?な表情を浮かべた。



「***はしてくれないの?」
『〜〜〜ッ』



どうかしたんだろうかと思うと、薄々分かってはいたけどこれだ。
私はギクリと肩を揺らして固まる。
そりゃあハグといえど挨拶。返さないと失礼だなんてことわかっているけどどうも文化の壁が邪魔をする。
俯き気味だった顔を「はやく〜」と急かすフェリの声で上げるとそこにはにっこりと目を瞑って口に弧を描くフェリの笑顔。
・・・なんか雰囲気が違うような。



「ほら〜」
『もーーーー!!///』



さらに急かされた私は折れて噴火しそうなのを必死に堪えてハグをした。



「ヴェー、やっとしてくれた。ルートや菊がいると絶対してくれないもんねー」
『・・・・・・』



そう言って微笑むフェリはきっと確信犯。


 


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