短編

□子どもみたいな2人
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『外行かないの?めずらしいね』



久しぶりの2人での休日。
いつもならすぐに「新しくできたお店に行こう!」だとか「遊園地に行こうじゃないか!」とか「こんな天気のいい日に外に出ないなんてもったいないよ!」とか言って外に遊びに行くんだけど、今日は違うみたい。



「たまにはこうやって***とゆっくりしたいと思ってね」



アルはそう言ってテレビの棚に収納されていたゲーム機を取り出した。



『ゆっくりって・・・ゲーム?』
「Wow!よくわかったね!」



そりゃあ今取り出したのがゲーム機なんだからわかるさ。
いや、取り出しているのを見てなくても大体は予想できたけどね。
アルが家の中ですることなんてゲームか・・・・・・ゲームくらいしかないし。



「ほら、ここに来るんだぞ!」



どうやら私が考えている間にささっと準備を終わらせたようで。
ソファーを背もたれ代わりに絨毯の上に座り、早くゲームを始めたいのか十分輝いている目をさらに輝かせて初めてゲームを与えられた子どもみたいに催促してくる。



『うわっ』



そんなに急がなくてもゲームは逃げないよ、と隣に座ろうとした途端にポンポンと催促していた手で腕を掴まれてグイっと思い切り引かれる。
屈んだ体制で引っ張られたため顔から床にタイブするんじゃないかとヒヤヒヤしたけど、私の体は上手いことアルに誘導されてスッポリという言葉がピッタリなほど綺麗にアルの足の間に入った。
ほっと胸を撫で下ろしていると、頭に重みを感じたのと同時にギュッと腕を回された。



『・・・もしかしてさ、コレをしたかっただけ?』
「悪いかい?***のとこではあすなろ抱きって言うんだろ?菊に教えてもらったんだ」
『べ、別に悪くはないけど・・・っくすぐったい!』



モゾモゾと肩口に顔を摺り寄せてくるものだから髪の毛が首や頬に当たってくすぐったくて。
身をよじって回避しようとするけど回されている手の所為で思うように体を動かせない。



『アルってば』
「もう少し・・・」



一向に解放してくれなさそうなアルにたまにはいいかと諦める。
しばらくして段々背中が重くなってきたと思ってまさかと声をかけてみるも返事はなし。寝ちゃったみたい。
今のうちに抜け出そうかと試みるけど本当に寝ているのかと思うほどの強さでホールドされているため不可能・・・私にどうしろと言うんだ・・・
とりあえず背中が悲鳴を上げる前にグイーッとアルの体をソファへ押した。



『・・・・・・お?』



するとちょうどいいくらいに倒れリクライニングソファに座っているみたい。
すぐそばで聞こえるアルの鼓動が心地よく感じて、このまま寝てやろうと目を瞑った。



 


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