ファイ・ブレイン

□二年の空白
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俺が正気に戻ってからだいぶたった。
……のだがやはり精神異常後というのはきついものだ。

体の調子のいい日はいいのだが、悪い日はすこぶる悪くなってしまう。

この前は調子がいいからって病院内探索をしていたら
次の日は朝から高い熱が出て一日ベットの上から動けなくなった。

自業自得なのだが俺はそういう事が大好きだったからやめれなかった。

そして今日は調子がいい日だった。
梅雨なのに雨も降ってなくて天気が良い。

中庭に生えている木がイキイキしているように見える。

(……中庭か)

そういえば俺は中庭に行ったことがない。

中庭ですこし太陽の光を浴びる。
それだけなら次の日寝込むことにはならないだろう。

そう考え俺は中庭に行くことにした。

静かな廊下を一人で歩く。

同じ部屋の車いすの男とすれ違い、
初めてここにきたころは歩くこともできなかったことを思い出す。

(俺がここを出るのももうすぐかもしれないな)

ここですごしているうちに
そうちょっとした希望を抱けるようにもなった。

エレベーターで一階に下り中庭へ向かう。

子供の泣き声や、生命の誕生を待つ人。
こういうものはやはり2年前から変わってはいない。

俺が2年間あの部屋で過ごしていた間も何も変わりはしない。
進化はしているがこういう気持ちは退化することはない。

それがこの世界のいいところだとつくづく思う。

ふとソファを見ると一人ぽつりと座っている少年がいた。
フードを頭まですっぽりかぶっていて顔はうまく見えないがあれはきっと……。

「ルーク……?」

「……あ!ジ、ジン……!」

こちらに気付き少年は走ってこっちに向かってくる。
やはり、ルークだったようだ。

「はぁはぁ、ジン!大丈夫なの?!」

「ルーク、俺は大丈夫だから。まず息を整えろ」

「う、うん……はぁっ」

少し走っただけで息切れを起こす。
この少年はあの頃と何も変わっていないような気がした。

そして、あの部屋の少年とは変わっていた。

約2年間俺はこの少年に部屋に幽閉されていた。
もっとも出ようと思えば出られたのかもしれないが俺は出なかった。

(あの2年間俺は何をしていたんだろう)

ふと考える。
そういえば思い出せない。

思い出そうとしてもただ頭が痛くなるばかりで思い出せない。
頭脳はそんなに劣化してないため頭をつかことをし続けていたのだろうが……。

(2年間も頭を使い続けれるものとはなんだろう)

そう考えているとルークが話しかけてきた。

「……ゴメンね、ジン」

ルークは申し訳なさそうな顔だ。
これは話を聞いてやるべきかと思いこう提案した。

「ルーク、ここに来てるってことは時間あいてるってことだよな」

「そうだよ?」

「じゃあ、なんか飲み物買ってやるから中庭で話すとするか」

「……!うん!」

ルークの表情がパァッと明るくなる。
やはりこの少年にはこんな笑顔が似合うなとおもった。
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