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□異邦人
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それから暫くして、
「……アンタが、“ジプシー”なのか?」
やっとの事で、オレは彼女に問い掛ける事が出来た。
「……」
彼女の指が僅かに跳ねる。
どうやら間違いないらしい。
「…アンタに訊きたい事がある」
そう切り出したオレに、彼女は頬に触れていた指を離す。
「……君に答える事は何もないわ」
静かに言って、その背を向けようとする彼女に、
「“暁”…いや、うちはイタチの情報が欲しい、アンタは知ってるハズだ」
「……うちは…イタチ……」
「…三年ほど前、アンタが媚珠という宝玉を狙っていた事は知っている。その時にアンタが手を組んだ男の事だ」
「……その赤い瞳…、君も“うちは”なの?」
「……そうだ」
「……」
彼女は一瞬瞳を見開くが、すぐに元に戻り、
「…確かに、アナタと同じ瞳をした人を知ってるわ」
呟くように言う。
「…そいつは、今何処に居る?」
「……さぁ、知らないわ」
「惚けるな!アンタがイタチと繋がっている事は分かってる!!」
オレは思わず彼女の胸ぐらに手を掛けて詰め寄る。
「……」
だが、それに対して彼女が動じる事はなかった。
美しい灰褐色の瞳に僅かな哀愁の色を浮かべて、ただオレに視線を注いでいる。
そして暫くの沈黙を経て、彼女は言った。
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