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□恋愛適齢期2
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あの日、あれからどうやって自宅に戻ったのかはあまりよく覚えていない。
ただ、
「お姉ちゃん、イタチさんと上手くいった?」
その夜にかかってきたサクラの電話に、
「…楽しかったよ」
そう答えた事だけはよく覚えている。
―
「……」
“楽しかった”
それは紛れのない事実だ。
だけど、それだけで恋愛感情を抱くほど私も若くない。
それはきっと、イタチも同じだろう。
「……」
テーブルの端に置かれたイタチの名刺。
“気が向いたらでいい”
彼はどういう意味を込めてそう言ったのか。
「……なんか、ダメだ」
私はその名刺をクシャッと丸めてゴミ箱へ放り投げた。
「…ちぇ、二度手間か」
クシャクシャの名刺はゴミ箱の端に当たり、床へと転がる。
「……」
それを拾い、ゴミ箱に捨てようと思ったが、何故だか捨てられない。
「…なんだかなァ」
得体の知れない胸のモヤモヤに、仕方なく机の引き出しに仕舞う。
「…よし!」
こんな時は飲んで寝てしまおう。
それが私の悪い癖だと思いながら、一人晩酌に更けるのだった。
―