long

□恋愛適齢期2
1ページ/6ページ



あの日、あれからどうやって自宅に戻ったのかはあまりよく覚えていない。
ただ、

「お姉ちゃん、イタチさんと上手くいった?」

その夜にかかってきたサクラの電話に、

「…楽しかったよ」

そう答えた事だけはよく覚えている。




「……」

“楽しかった”

それは紛れのない事実だ。
だけど、それだけで恋愛感情を抱くほど私も若くない。
それはきっと、イタチも同じだろう。

「……」

テーブルの端に置かれたイタチの名刺。

“気が向いたらでいい”

彼はどういう意味を込めてそう言ったのか。

「……なんか、ダメだ」

私はその名刺をクシャッと丸めてゴミ箱へ放り投げた。

「…ちぇ、二度手間か」

クシャクシャの名刺はゴミ箱の端に当たり、床へと転がる。

「……」

それを拾い、ゴミ箱に捨てようと思ったが、何故だか捨てられない。

「…なんだかなァ」

得体の知れない胸のモヤモヤに、仕方なく机の引き出しに仕舞う。

「…よし!」

こんな時は飲んで寝てしまおう。

それが私の悪い癖だと思いながら、一人晩酌に更けるのだった。




次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ