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□傷痕
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「馬鹿ッ、何やってんだい!!」

「!?」

ザクッ

「っ…!」

ガッ! ドスッ!

「ぐぁ…ッ!!」

ズル……

「……」

ドサッ…

「……」

諜報活動へと赴く為に足を踏み入れた街道で、オレと名無しさんは追い忍と遭遇した。
追い忍の面は木ノ葉暗部のもの。
戦闘は避けれない場面だというのに、オレは躊躇してしまっていた。

「…ったく、世話かけさけてんじゃないよ」

不機嫌そうにオレを見遣る名無しさんの足下には、彼女が手に掛けた追い忍の死体。
そして、その透けるような白い頬には大きな傷が付けられていた。

「……」

オレを庇ったのか…
白い頬を伝う鮮血が生々しく、痛々しい。

そんな事を思っていたオレを他所に、名無しさんは足下に倒れていた追い忍の面を取る。

「……知り合いだったかい?」

「……いや」

訊かれて答えたが、それは間を置いたものになってしまう。

「……そうかい」

事情を察知したのか、短く返して頷くと、オレにそれ以上の事を訊くことはなかった。
…名無しさんも勘はいい。

「……」

だが、それはひょっとすると“天山”での出来事が影響しているのかも知れない。
もうふた月ほど前の事になるが、名無しさんは他人の事情に首を突っ込んだことで苦い思いをしている。
その当初の鬱ぎ込みようといえば酷いもので、元々細かった体が更に細くなるほどに窶れたというのは記憶に新しい。

勿論、本人はそれを認めようとはしなかったが。

「……詮索しないのか?」

オレが訊ねてみても、

「…ンなことしたって、何の得にもならないだろ」

と、名無しさんはぶっきらぼうに返すだけだった。




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