長編
□第1話 〜動き出した歯車〜
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あれから、どれくらい時間が経ったのだろうか。
屋敷の外は真っ暗。私が屋敷に戻ってきたとほぼ同時に降ってきった小降りだった雨。今は屋根を突き抜けるように激しく降っている。
それに、先ほどまでは優しかった春風も今はその面影もないくらいに強く、乱暴に吹き荒れる。
屋敷には私一人。
いつもなら、姉さんが隣に居て、本を読んでくれるのに。
今日はまだ帰ってこない。
時計の針が時間を刻む度、不安が募る。
(もしかしたら、事故にあったのかしら…。)
そんな悪い予感ばかりが頭をよぎる。否定しようとするけど、どこかでそれが現実になっているのではないかという不安は拭い切れなかった。
そして、その予感はやがて現実となる。