長編
□第1話 〜動き出した歯車〜
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「…様、アリス様。」
『ん…?』
屋敷で雇っている使用人に起こされた。知らぬ内に寝ていたみたいだ。
「大変です!マリア様が!」
使用人はすごく慌てている。その慌て具合から、只事ではない事が読み取れた。
『!!姉さんがどうしたの?!』
「マリア様が昨晩の嵐で事故に遭われて・・・」
言葉の続きを聞かなくても分かってしまった。その先に続く、最悪の答えを。
『・・・姉さんが亡くなったのね。』
私は抑揚のない声で尋ねる。
「・・・はい。」
俯きながら、肯定の言葉が帰ってきた。
『もう、下がっていいわよ。貴方も色々仕事があるでしょう。』
嗚呼、人の死はどうしてここまで突然なのだろう。つい昨日まで笑顔で「行って来ます」と言っていたのに。それが、一瞬で無くなってしまう。気づく事も救う事もできないまま簡単に消える。