長編
□第1話 〜動き出した歯車〜
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「アリス、ちょっと出かけてくるわね。すぐに帰ってくるから。行って来ます。」
『早く帰って来てね!行ってらっしゃい、姉さん!』
「ふふっ。分かってるわよ。いい子にしてるのよ、アリス。」
『もちろん!』
「それじゃ、行って来ます。」
姉さんはそう言って屋敷を出た。私は、姉さんが帰って来るまで、いつものように屋敷の庭園で本を読む。
春風が私の頬を撫で、小鳥たちは歌を歌い、草花たち踊る。
私はこの瞬間が大好きだ。
姉さんを待っている時間は幸せで溢れている。
『今日は何を買ってくるのだろう?』とか、『どんな面白いお話をしてくれるのだろう?』とか色々な想像を膨らませ、姉さんの帰りを待つ。
そして、姉さんが帰ってきたら一番に、『お帰りなさい!』と言うのだ。そうしたら、「ただいま、アリス。いい子にしていたかしら?」と言い、母によく似た華奢な手で私の頭を優しく撫でてくれる。
考えるだけで笑顔が溢れて、幸せな気持ちのなる。
そんな事を考えてると、そろそろ姉さんが帰ってくる時間になっていた。
私は急いで屋敷に戻り、姉さんを待った。