中編(ブック)
□ep.1
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−−−悪いな。この仕事だけは俺一人でやりたいんだ。…ルパン家の誇りにかけて。
そういった彼の目は、いつにも増して真剣だった。まっすぐに私の目を見つめていた。
−−−そんな、だって次の仕事、危ないんでしょう?一人でなんて…
−−−だ〜いじょうぶだって。俺様を誰だと思ってんだ?狙った獲物は必ず奪う神出鬼没の大泥棒、ルパン三世様だぜ。
彼がいつものように微笑んだ時、妙な胸騒ぎを感じたのをよく覚えている。
行かないで。彼はそう言いかけた私の頭に手を乗せてその言葉を遮った。
−−−この仕事が成功したら、もう一つ盗みたいものがあるんだ。俺はそれを盗むまで絶対に死なねぇから安心しろって。それにこの俺がこーんな世界一いい女を残して死ぬわけねぇだろう?
それでも私の不安は消えなかった。
彼は私の手の甲に軽くキスをして、私に背を向けた。
−−−じゃあな。行ってくる。