ディーノ受
□Non lasciarmi solo
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リボーン、お前が好きだった。
だけど、お前は突然俺の前から消えてしまった。
それ以外にも沢山の部下が死んだ
それどころか弟弟子のツナ、大切な人、多くの命が犠牲になった。
何もできなかった、力になれなかった自分が悔しくて、俺は何度も泣いた。
10年前のお前が来て、嬉しかった半面正直悲しかったんだ
もう一生この時代のお前に会うことができないのか嫌でも分かるのがつらかった。
戦いが終わって、運命が変わって、またお前に会うことができるなんて思いもしなかった。
生きている、実物のお前を見たときは思わず子供みたいに泣きそうになったのを覚えてる。
タガが外れて、うっかり自分の想いを吐きだしそうになって、必死に我慢したんだぞ
愛人がいっぱいいて、女好きなおまえがむさ苦しい男である男の俺から思いを寄せられていたと知ったところで嬉しいわけがない
だって、今の関係を崩してしまうのが怖かったから。
二度とお前を…リボーンを、失いたくない。
だから、思い続けるのが辛いから…この思いは、胸の奥にしまいこんで、忘れることにした。
**********
日本-ボンゴレファミリー本部-
久しぶりの日本。幾度となく来日しているが、最近は忙しくてこれなかった。
というよりはなるべく日本に来ないようにしている。
ツナのそばにはツナの護衛任務についているかもしれないリボーンがいる可能性が高いから
ボス同士で直接対談というのはよくある話で、まぁ会議という名の思い出話に花を咲かせたりするもので。
ボンゴレとは同盟ファミリーでもあるので、私情をはさんで関係を悪化させるわけにもいかず、昔は毎日のように日本に来ていたものを今は最低限回数の来日にとどめている。
今夜、日本で予約したホテルに泊まって、翌日の朝日本を発つ予定だ。
そうだ、恭弥にも顔合わせないとだな…
俺はツナの執務室の前に立ち、ドアをノックすれば『ディーノさん?』と男にしては少し高めな柔らかな声がした。
「ようツナ、良く分かったな」
「気配で分かりますよディーノさん…お久しぶりです、そろそろ来るころかなーと思ってました」
正式にボスの座を継承し、ボスとしての執務をこなし、ボスとしての経験を積んだツナは、一段と超直感が冴えわたっているようで、…なんでもお見通しのようだ。
「…今日は一人か?」
「そうですね。骸とクロームは謀反したファミリーの諜報活動に行ってますし、隼人は任務で席を外しています。ランボと了平さんは長期任務で、雲雀さんは相変わらず財団の方にかかりっきりですし、今日は屋敷には帰ってこないかと」
そう言いながらツナはこちらに歩み寄ってくるも、執務机には書類が山のように積まれている。
「そっちも忙しいんだなー…日、改めた方が良かったか?」
「良いですよ、ちょうど休憩しようと思っていた所です。ソファ、座ってください」
そういってツナは、ドアの外で護衛している部下にお茶を持ってくるように声をかけた。
俺は進められるがままに、ソファへと腰を下ろした。
「過保護なんですよね。」
「ん?誰がだ?」
「リボーンですよ、昔は恐ろしいくらいにスパルタだったのに。
任務お願いって言ったら自殺するつもりかなんて言って護衛なんてつけて…自分の身ぐらい自分で守れるのに、もう勝手なことしないって言ってるのに信じてくれないし…。ディーノさんもそう思いませんか?」
他愛もない会話の筈なのに。胸が苦しい。
この気持ちを忘れようとしていたのに、忘れることが出来なくて。
ツナの口がリボーン、と紡ぎだす度に、ずきん、ずきん、と心が痛んで。
自分の知らないリボーンを、ツナが語るのが、こんなにも苦しいだなんて
卑しい自分が本当に嫌になる。
リボーンとツナには俺が介入できない絆があって。
変えられない、変えようがない、深い絆があって…孤独感が生まれて、置いてかれた気持ちになる。
「…さん、…ィノさん、ディーノさん?」
「……あ、え、ッとすまんツナ、考え事してた…何だ?」
ちょっと涙腺が緩み、鼻の奥がツンとした。
思わずはぁ、とため息をついてしまい、気持ちを切り替えるためにゆっくりと瞬きをした。
上手く笑えただろうか、ゆっくりとツナと視線を合わせた…その時
ツナの視線が、恐ろしいほどに冷たくなっていた
「おい、ツナ・・・?」
「考え事って、リボーンの事ですよね?」
息が止まったような気がした。
時計の秒針の音がやけに煩く感じる
酷く動揺していたが、その動揺を相手に悟られぬよう微笑んで感情をひた隠しにした。
「良く分かったなツナ、さすが…リボーンに読心術でも習ったかー?俺も小さい時に山で修行させられたしなー…」
「話、逸らさないでいただけます?」
ツナの鋭い視線が俺に突き刺さる。
まさに蛇に睨まれたカエル状態で。
動くことが出来なかった…いや、動くことを許さない雰囲気をまとっていた。
そしてツナがゆっくりっと立ち上がり、ソファがギシッと音を立てた。
「ディーノさんってリボーンの事好きなんですか」
ゆっくりとツナがこちらに歩み寄ってきて、自然とツナに見下ろされる形になる。
口の中が乾いて、うまく発音できなかった
「っ何、を、」
「笑顔がひきつってますよ。ディーノさんは昔から嘘が下手ですよね。」
その時のツナの顔は、本当にツナかと疑うほどだった。
今まで見たこと見ない顔で…笑顔を絶やさなかったツナが無表情でこちらを見下ろしていた。
「…、っ」
ゆっくりとツナがソファに片膝を立てた。
ギシ、とソファが軋み、二人分の体重を乗せたソファは大きく沈んだ。
切羽詰った状態の俺はツナの雰囲気に圧され、無意識に上半身を引いたがツナも俺の体の両脇に手を置き迫ってきた。
その時のツナはなぜか、僅かに泣きそうな顔をしていて脳裏に焼き付いて離れなかった。だから、抵抗できなかった
「いっ…、」
Tシャツの肩口を握りしめられ、ツナの唇が性急に俺のに重なって、すぐに離れた
反動で唇が切れてしまい、口角から血がにじんだ。
「逃げれませんよ、」
「ッ、」
「こんなにも、---『『パァァァン!!!』』---」
血が拭われ、再びツナの顔が近づいたとき、銃声とともに眼前を塊が通過し、ツナの前髪が数本吹き飛んだ。
ツナの言葉とそれを遮った、よく聞きなれた銃声と共に鼻につく微かな硝煙の匂い。
その塊が飛んできた方を見たら、俺の思い人で、ツナとの会話の中心であったその人が立っていた。
任務だと聞いていたリボーンが立っていたのには予想外で、目を見開いた。
すると、ツナは俺から体を離してリボーンの方へ歩み寄った。
二人の間には、張りつめた空気が漂っていた。