男主.w

□五品目
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「あー…ねむ。」






眠気眼で裏口からワグナリアへと入る。休憩室へと行けば、そこには誰もいなかった。

更衣室でコック服へと身を包んで更衣室を出て休憩室を出るところでふとシフト表へと目を向けると、轟八千代の欄に出勤の印があった。





「轟って確かフロアチーフで…山田ファミリーのお母さん、だっけか」





チーフってことは一応あいさつしといた方が良いのか?
と考えを巡らせながらキッチンへと向かっていると眼前を何か光るものが振り下ろされ、すごい殺気に咄嗟に身を引けば前髪が数本落ちるとともに目の前には抜身の刀を持った女性が殺気をほとばしらせた女性が見るからに優しそうな男性に刃を向けていた。






「また杏子さんを餌付けして…!!なんでいつもいつも私と杏子さんの邪魔をするのかしら…もうこうなったら始末して…!!!」

「ととと轟さん、落ち着いて…、」






男性の方は当然と言ったらそうなのだが、両手をあげて降参のポーズをとっていた。

そんな男性を前に制服に身を包んで刀を構えた女性は今にも切りかかりそうな様子で殺気を漲らせて一歩、また一歩と男性に近づいて行っていた。






「えー…ファミレスで刃物沙汰とか…」

「おー霧島、おつかれ」

「霧島君どうしたの?」





心の声を自然と口に出していたらしく、それが聞こえたのか相当いぶかしげな表情をしていたからなのかカウンター越しに佐藤君と相馬がこちらを見て話しかけてきた。





「…この店って店長といい伊波さんといいパフォーマンスでやってたりするんですか?」

「そんなわけねーだろ。上がああだしな…やるにしてもリスクが大きすぎる」

「音尾さんも迷子でいなくなった奥さん求めて旅してるだけなのに轟さんに目つけられて気の毒だよねー」






二人して、現在進行形で今にも事件へと発展しそうな二人に哀れんだ視線を送っていた。
って迷子で奥さん探すたびとか壮大過ぎて…






「って、あの男性ってマネージャーなんですか?音尾さんって…しかも女性の方は、」

「そうだよー。あのいまにも斬られそうになってるのがこの店のマネージャーの音尾さん。で、その向かいにいる刀を持っている方が轟さん、フロアチーフだよ」

「そうなんですか…というかあの二人放っておいて大丈夫なんすか?」

「大丈夫だよー多分。そろそろ店長がお腹すかせてる頃だと思うし」






あの二人がまさかのマネージャーとチーフだと知ったあと、音尾さんことマネージャーがどんどん追いつめられていたのでさすがに心配になり二人に尋ねればどこからその自信が来るのか…相馬は不安を微塵も感じさせない様子でそう言い放った。

大体店長の腹の様子がどうしてわかるのか、と疑問に思ったがそうしてまもなく、店の奥から店長の無気力な声が聞こえてきた。
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