男主.w
□七品目
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「今日葵ちゃんいないんだねー」
「むしろあいついた方が忙しくなること必須だし好都合だろ。」
「佐藤君もひどいこと言うよね〜否定はしないけど」
今は繁盛時も過ぎたころ。
そこそこお客さんも入ってはいるが、葵ちゃんとぽぷらちゃん以外出勤でさほど忙しさを感じない。…むしろ葵ちゃんがいた方が忙しくなっていたかもしれないと、話していたところ。
話しながらも手は動かしているから問題はない、相馬なんかは口だけ動かして手を動かさないので何度か佐藤君に殴られていた。
「まひるちゃん、このパスタ3卓のお客様に」
「ひっ…!!」
丁度まひるちゃんが料理を取りに来てたので、出来上がったパスタをカウンターへと差し出した。するとまひるちゃんは漫画のように、面白いくらいに後ずさりする
彼女は日々男性恐怖症が改善しつつあるというが料理の受け取りすらできないところを見るとまだまだなのだろう。
俺は身なりがそこそこ派手で、加えて佐藤君以上に身長が高い上に攻撃が利かないので相当苦手らしい。
男性客への接客を除けば完璧なのだが、ここまで重症だと彼女も相当苦労するだろう。
「まひるちゃん、3宅様女性っぽかったから大丈夫だと思うわよ、がんばってちょうだいな」
「霧島キモい」
「そうですよ何やってるんですか霧島さん、仕事してください。伊波さんも、料理が冷めますよ」
前まひるちゃんが料理を取りに来てた時に、いつもの如く怖がっていたので佐藤君は女言葉で会話していた。なので俺もそれを真似てみたところ張本人にキモいと一蹴された。更に洗い物を持って来た小鳥遊に注意された。
そして未だに立ち尽くし、背を壁にして身を固くしているまひるにちゃんに丁度通りかかった小鳥遊が促せば、素早く片手に料理を持ち、ごめんね小鳥遊君!と言い擦れ違い様に小鳥遊君のみぞおちを殴って足早にフロアへと走り去っていった。
「…小鳥遊君、大丈夫?今のモロに入ってたよねー」
「…慣れてるんで、大丈夫ですよ…と言いたい所ですけど最近の伊波さん強烈、で」
小鳥遊君は口ではそう言いながらも頬をヒクつかせて苛立った様子だった。
「ほらあれじゃない?霧島君って伊波さんの攻撃かわすか受け止めるし、それでストレスが溜まってそのストレスが殴りやすい小鳥遊君に向かってるとか」
「俺のせいかよ」
相馬の言葉は的を得ていて、納得するとともに俺によるとばっちりを受ける小鳥遊君に憐みの視線を送った。
「まーまー小鳥遊君、まひるちゃんも悪気があって殴ってるわけじゃないみたいだし、」
「アレに悪気がないとか絶対ありえない...」
そう言えば何やら小鳥遊君は気になることがあったらしく、幾分か思考を巡らすと何か思い出したようにつぶやいた。