小説
□大切なもの
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――あれは、いつのことだっただろうか。
早くも、数年の月日が経った今。
…私は、何故だかあの頃に起きた出来事を思い出していた。
――媛星。
そう。それはいつも空を見上げる度に、禍々しく嫌な輝きを放っていた。
「………」
まるで、前世のように遠い昔の記憶が蘇る。
もちろん、その全ては夢や幻ではなく、実際に起きた過去の話だ。
あの時のことを思い出すなんて……。
一体、どうしたというのだろう。
朦朧とした意識の中。なつきはベッドの上で一人、小さく呟いた。
「……ふっ、どうかしているな。」
今まで、あの頃に起きた出来事は、極力、思い出さないようにしてきた。
……でも、何故だろう。無意識のうちに、私は遠い過去の記憶を呼び戻していたのだ。
あの時に起きた出来事に対して、何か後ろめたい事や、大きなトラウマがある訳では無い。
「………」
…そうだ。
“あれ”が遇ったから、私達(HiME )は、自分にとっての大切なものに気付く事が出来た。