お題。
□もう恋は始まっていた
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いつもと変わらない朝。
朝ご飯を食べて、着替えて、身支度を整える。
『ギャリー、おはよ!』
そして、いつもと変わらない幼馴染の元気な声を一番に聞いてから、アタシの一日は始まる。
「あら、リリィ。おはよう。今日もアンタは無駄に元気ねー。」
『無駄にとは失礼な!! いつもしょげてるよりはいいでしょ?』
無駄にという言葉に頬を膨らませては拗ねるリリィの頭を「はいはい」と撫でてやれば、一瞬で笑顔に変わる。
この風景をもう何年も見てきた。
いつもと変わらない朝。
変わらない風景。
変わらない、リリィの笑顔。
変わらないことが心地良くて、これから先もこの関係はずっと変わりはしないと、そう思っていた。
だけど、今日は何かが違う。
「(な、なによアタシ…なんでこんなに心臓がドキドキいってるの…)」
今日に限って、彼女の笑顔を見てからやけに鼓動が速い。
今までこんなことは無かったのに。
『ギャリー、何してるの?大学、遅刻しちゃうよ!』
そう言ってリリィに引かれる腕が、掴まれた場所が一気に熱を持つ。
より一層高鳴る鼓動に感じる少しの心地良さに、浮かぶ一つの疑問。
「(まさか、ね…)」
長年この関係で生活してきた自分達に、そんなことはありえない。
しっかりしなさい、アタシ!と自分で自分に活を入れては疑問を振り払い、彼女に手を引かれるままに歩きだす。
今日もまた、変わらない一日が、過ぎていくんでしょうね。
もう恋は始まっていた
(きっとそれに)
(まだアタシたちが)
(気付いていなかっただけ)