美術館

□第2話
1ページ/4ページ

 




ごぼごぼと水に肺の中の空気が溶けていく音がする。

だけど、水中特有の圧迫感や息苦しさは感じられない。

なのにこの水は、自分から酸素をことごとく奪っていく。



『(一体どこまで続くんだろう…)』


まさかこのまま死んでしまうのだろうか。

そんな嫌な想像が脳内を侵食し始めた頃、足下に仄明るいものが見えた。

何だろうと考える間もなく、体はどんどん光の方へと吸い込まれるように落ちていく。



『…、ごぼ…っ』



あともう少しで光に届くというところで、先程まで何ともなかったはずの息が突然苦しくなった。

苦しくて、酸素を求め開いた口からは空気が奪われ溶けていき、代わりに水が流れ込んでくる。

そして光に包まれると同時に、そのままゆっくりと意識を手放した。




.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ