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ただただ、怖かった
何が怖かったのかを一から説明すると、まずは瞳だった
柔らかい眼差しのなかにどこか鋭いものを隠して、そう、本心を隠して品定めするような瞳で見つめられる
そらしたくてもそれを許さない何かがあって、むしろそらしたら敗けだと私の中の何かが訴えていた
その次は声
どれだけ周りが雑音で溢れていようとも、彼の声は容易く私の耳に入り込み、脳に侵入する
内側から破壊していくかの様に、少しずつ、少しずつ侵されていく
そして、手
華奢そうに見えるのに、意外とその手は大きくて骨ばっていた(男の人の、手だ…)
その手が私に触れる度に体温が急上昇し心臓が跳ねる
「ななしちゃん」
あぁまた跳ねた
全身の血が沸騰したみたいになって、何も考えられない
「好きだよ」
私のなかで何かが弾けた
突き付けられた真実
(貴方に堕ちていくのが怖かった)
(逃がさないよ、)
(もう、僕のものだ)
2010.05.16