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時計の針が動く

今、12を指したところで長針と短針が重なった

暇潰しに見ていたニュース番組の片隅に写っている時計も、全部0になる

窓の外を見れば真っ暗で(深夜だから当たり前だけど)月が異様に浮いて見えた

結局、待ち惚けか

寂しいも、悔しいも、怒りすら通り越して、呆れに近いため息をつく

リモコンでテレビの電源を切った

今まで我慢していたテーブルのご馳走の方に手を伸ばす

チキンを電子レンジにぶっ込んで、オートで暖める

その間に、自分の皿に冷めたスープをよそった

火にかけることがもうめんどくさい

サラダにかけてあったラップも適当にむしりとり、ドレッシングをふりかける

タイミングよくチーンという音がして、取り出せばとても香ばしい匂いが部屋中にただよった

一人で食べるのもなんだから、誰かモンスターボールから出そうか

と一瞬考えるも、他の子の後始末がめんどくさいことに気づいて止めた

好かれるのは嬉しいことだが、泥沼は勘弁だ

さて、チキンも食べやすく切り分けた事だし、頂きます

と手を合わせたとき、ピンポーンとインターホンが鳴った

こんな時間にチャイム鳴らす奴なんて私の知り合いには居ない

居てたまるか

私はチキンを食べるんだ

そう自分に言い聞かせて、フォークを握る

その銀色に光る刃が、獲物に近づいていき…

ピンポンピンポンピンポンピンポン

まさかの連続攻撃にフォークが手から滑り落ちた

今深夜だよ近所迷惑!

っていうかそんなむきになるなんてあんた何歳だ

慌てて玄関に向かい、ドアチェーンと鍵を外した

私がノブに触れる前に、ドアが勝手に開く

「誰が来たかも確認しないで開けるなんて、不用心すぎるんじゃないかな」

そう言いながら中に入ってきた彼は、鍵とチェーンをかけ直している

「連続ピンポンして確認する暇もくれなかったのはどこの誰ですかね」

「さぁ、どこの誰だろうね」

白々しい言い方に、本日何度目かのため息が出た

この人、ほんとに24歳なのだろうか

「で?」

「で、って?」

ああもう、私が言いたいことなんか分かってるくせに、この人は

「こんな時間に何のようですか」

「何のって、今日はクリスマスだろう」

「もう12時を回ったのでクリスマスじゃありません」

そう言うと、彼はにやりと笑った

何を、企んでいるのだろうか

「僕の時計は、まだ11時だよ」

自慢気に、私に腕時計を見せてくる

確かに時刻は、まだ11時だった

「………………ダイゴさん」

「何だい?」

キラキラした目で見つめてくるダイゴさんに、口元がひきつった

いい大人なんだから


(時計くらいちゃんと合わせてください)
(ぐぇっ)
(全く…自分からクリスマス一緒に過ごそうっていってきたくせに)
(〜〜〜〜っ)
(準備は全部人に丸投げしといて、当の本人は約束の時間通りに来ないし)
(ちょ、本気で殴ったね?!)
(おまけに連続ピンポンだし意味不明だし)
(スルー!?)
(…心配、した)
(!…ごめん、ね?)
(…ばか)
(うん、ごめん)
(……………)
(……………メリークリスマス)
(ほんと空気読んで)
(…(どうして計画通りにいかないんだろう…))


2009.12.26

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