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□体
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見た目よりも柔らかい髪にそっと指を通した
色素の薄いそれは重力に従ってすり抜けていく
さっきまで悪夢にうなされていた彼の顔が、少し和らいだように見えた
「大丈夫だよ、ダイゴ」
もっと幸せな夢を見られるように願いを込めながら頭を撫で続けると、だんだんと健やかな寝息になっていく
「私、ずっとここにいるよ」
包むようにそっとほっぺたに触れたら、親鳥に甘える雛みたいに擦り寄ってきた
胸の奥がポカポカと熱い
この熱が全部ダイゴに流れ込めばいい
愛しくて愛しくてたまらないのだ、と
微かな花の香りと柔らかい温もりを感じた気がして目を覚ました
けれどそこに、求める姿は見当たらない
布団に顔を埋めて彼女の香りを探すけれど、僕の匂いしかしなかった
「…ななし」
口にした名前は虚しさを助長させるだけ
分かってはいたが、どうしようもなかった
それほどに僕は彼女を愛していたし求めているのだ、今も
瞼を降ろせば鮮明に彼女を描ける
なのに僕は、二度と彼女に触れられない
想い出でしか会えないのに、熱が冷めるように少しずつ薄れていくのが分かる
悲しくて、もどかしくてしょうがないのに、僕にはどうにも出来ないのだ
夢にさえ出て来てくれない彼女はなんて意地悪なんだろうか
ねぇ、聞こえてるかな
会いたいよ、ななし
「どこにいけば、あえる?」
夢の中でさえ、あえない
滲んできた涙をそのままに、ただただ宙を見つめていた
執筆2012.01.08
up2012.12.22