□風邪っぴき
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朝、起きたら体が凄くだるくて、頭痛もして、それから酷く寒かった

お気に入りの毛布を巻き付けてもそれはかわらなくて

重い体を引きずって、なんとかリビングまでたどり着いたけど、私の体力はすでに限界だった

「おはよう…ななし?」

かくん、と足の力が抜けて崩れ落ちる

ふわりといいにおいがした

床に倒れる前にはるかが抱きとめてくれたらしい

安心できる温もりに身を委ねると、そのまま意識を手放した





次に起きた時は、また自分の部屋にいた

ぼーっと天井を眺めていたら、控えめなノックの音

ゆっくりドアの方を見ると、桶を抱えたみちるが立っていた

「み、ちる…」

いつもの自分ならありえないくらい小さな声しかでない

それでもみちるにはちゃんと聞こえたようだった

そばに来てくれたみちるの手が額に触れる

ひんやりしていて気持ちいい

「まだ熱があるわ」

みちるの手が少し下がってきて、視界を覆われた

「おやすみなさい、ななし」

おやすみ、と返したけど聞こえただろうか

よくわからないまま、夢の世界に落ちていった






なんだろう

右手があったかい

そこからどんどん熱が広がっていってポカポカする

よく知った人の気配だ

「…はるか?」

確かめようと目を開くと、思った通りの人がいた

私の右手を握りしめて、ベッドに上半身を預けるようにもたれかかって、…寝ている

私が倒れてからずっと看病してくれてたんだろうなぁ

せめてものお礼に毛布でもかけてあげようと手を離した

「…ななし?」

「はるか、…起こしてごめん」

浅い眠りだったらしい

私の姿を確認するように伸ばしてきた手を、頬に導く

「もう、大丈夫なのか?」

「うん」

「よかった」

触れてやっとホッとしたのか、優しく微笑むはるかの手の平にありがとうのキスをした







2013.02.07

不完全燃焼

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