□お見合い結婚しました
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先月、俺は結婚をした。それだけでも昔からの付き合いのやつは驚いたのに、俺でもビックリだがなんとまぁお見合い結婚だ。鬼道くんに初めて言った日なんか、寝言は寝て言え不動、と何回言われたことか。

「明王さん」
「おー、何だ」
「明日試合ですよね?」

ユニフォーム、洗っておきましたので。そう言って差し出されたのは、Yシャツかってくらいピチッとアイロンのかけられた、それ。一瞬クリーニングに出したのかと思ったが、こいつは今洗ったと言っていた。ということは、当然アイロンも、こいつがかけたわけで。笑い転げたくなる気持ちを必死に押さえてそれを受け取った。…あー、でもダメだわ。

「サンキュ、な…ククッ」
「?」
「ふはっ おま、クリーニング屋に、なれんじゃねーの」
「ええ?そんな、無理ですよ」

少し頬を赤らめながら否定するななしに、腹筋が悲鳴をあげた。これが俺の嫁になった女な訳だが、察する通り色々抜けている女だ。見合いの席ではそれが扱いやすそうだと思ったんだが、なかなかどうして。振り回されているのはこっちだったりするのを、こいつは知らない。

「普通に干してもシワなんかつかねーよ、そういう素材なんだから」

ネットに入れて洗うだけで十分だというのに、この天然ときたら。あー笑いすぎて腹いてえ。ずっと笑い続けている俺に流石にムッとしたのか、ななしが反論してきた。

「母に、仕事着は男の戦闘服なのでアイロンは必ずかけなさいと教えられてきたんです」
「ぶっは、そりゃリーマンとかの話だろ、俺サッカー選手だって」
「でも仕事着でしょう!」

反論じゃなくて追い討ちの間違いだった。マジで腹筋がヤバイ。ヒーヒー言いながら息を整える。ヒッヒッフー。

「はー、笑った。ところで、ななしチャン、今日の夕飯は?」
「あ、はい!今日はですね、ブリが美味しそうだったので照り焼きですよ!あとおひたしと、」

さっきまでふくれてたのが嘘みたいににこにこと話し始めた。こっちが話題を変えれば機嫌もコロリと変わる。女心と秋の空、ってか。最初はどうなることかと思ったが、ななしといたら当分退屈はしなそうで何よりだ。 今のご時世お見合いなんて古くさいと言うが、捨てたもんじゃねえな。楽しそうに話すななしに釣られて俺もひとつ、笑みをこぼした。





2014.09.25

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