詞
□水死
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水死
(男)独壇場にやって来てしまったわ
ここで何かを語らねばいけないらしい
拍手喝采 見渡すが数知れぬ聴衆
はて? 私に 何を語れと?
俗世の不満でも述べてみましょうか
語るが勝手 誰も耳を貸してはくれぬ
己が生い立ちでも論じてみましょうか
汝は知らぬと言われれば
いかにすべきか
(女)小説家は野垂れ朽ちてったの
理解されねば末路だと溺れおわした
浄土昇天 語るるが全きだった旦那様
ねぇ。 わたしは 悲しいですよ
女人は水死でも川にしてみましょうか
するが願い いかで追ひばやと思ひつ
己が身体を沈めて水面に突き出た腕を
我はできぬと 思ってしまえば
いかにすべきか