詞
□無題
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無題
鼓膜にこびれ付いて
剥がれない ざらついた雨音
雨は慰めても癒してもくれないから
反響する反響する反芻する
どうして苛虐的にしかなれなかったの?
失ってから 初めて
悲鳴をあげる
スルリと手の平から零れ落ちてった
―あの人
散々、罵ったこの口は
意地が悪くて 今は震えてる
無くしてもまた拾えばいいと思ってたのに
決まったことかのように
浅ましい声は雨に溶け
伸ばした腕は宙を掻く
失ってから 初めて
悲鳴をあげる
叶うなら 全てを
元に戻して
何事もなかった―恋人かのように