詞
□夏解
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――…夏が解けた
一瞬のまたたき
あなたの細い瞳が
さらに細まって
薄い唇は弧を描いた
ガサガサに荒れた肌は
赤みを帯びる
真夏の太陽によく溶けた
夕焼けの色によく染まる
角張って不健康な
それでいて男らしい指が
わたしの頬をゆっくり包む
綺麗だなんて
これっぽっちも
思ってもみない
醜男でありふれた
そこらじゅう一人のあなたのために
愛している、だなんて
安っぽくてありふれている言葉を口に出すなんて
なんて 浅ましい
――…蝉が啼いている
熱に満ちた視線をおくりあう
浅ましいわたしたちは
解けた夏と共に
蝉が啼く一瞬のまたたきの中
溶けてしまえばいい