第二期小説 魔法の国の戦闘記

□第9話 隠者
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<聖リリィー学園>


火「ほらーっ!雪兎さん早く〜」

雪「ちょっと、火図くん待ってっ〜」

グイグイと雪兎の手を引きながら、学園長室に続く廊下を火図は進んでいく。


「ねっ、ちょっと。あれ雪兎様じゃない?♪」
「キャアアアアア〜雪兎様ぁ〜♪」
「こっち向いて〜」

火「ちょっと、急ぐからごめんね〜……(女子の人気凄いな…)」
廊下で立ち話に花を咲かせていた女子達が、雪兎の周りに押し寄せる。

その間をかき分けながら火図と雪兎は、学園長室に向かう。

逃げ込むように校長室に駆け込むと、火図は内側から鍵をかけた。

リ「ちょっと、何事……」
廊下の騒ぎに驚き、トイレから出てくるリリィー。


雪「学園長……」

火図に、腕を引かれた状態のまま、扉の前で名前を呼ぶ雪兎の姿に、リリィーは目を見開き驚く。

リ「嘘っ……?、雪兎?」

まさかの、いきなりの展開にリリィーは雪兎に抱き着いた。


雪「ちょっ学園長っ―\\\!?」
リ「良かったぁ〜…、っ良かったぁ〜……雪兎が無事でぇ〜」
鼻水を滴ながら歓喜するリリィーに、雪兎は思わず微笑みを浮かべる。


雪「学園長、僕は大丈夫ですから、泣かないで…」

そう言った雪兎の頬には、一筋の雫が伝ったていた。


火(ふふふ、良かったね、雪兎さん…♪///)


そんな刹那。


RRR〜〜♪RRRR〜〜RR♪


感動の再開に水を指す様に、デェスクの上の電話が鳴る。

雪兎から体を離して受話器をとる。
リ「はい!こちら聖リリィー学園、学園長のリリィーでございます。」

しばらく話したあとリリィーは受話器をおいた。

火「誰からですか?」

リ「偉いことになったわ……」

火図の問いに、リリィーは振り返る。

振り返ったリリィーの顔から血の気が引いていた。



リ「連合国政府から、雪兎の強制送還命令が出てるって……」

火「な―っ!?どうして強制送還なんか!?」


リ「一瞬だとしても、雪兎が反政府軍に入ったと、何処かで情報が漏れたのかも」

火「そんなっ……ダメだよ、雪兎さんは渡さないよっ!」

リ「えぇっ、もちろんよ!雪兎は私が守るわ!」

火図がそう言い頷けば、リリィーも意を固めてうなずき返し、雪兎を見る。

雪兎は顔を伏せたまま、何かを考えているのか?

雪「火図くん…学園長……、俺………」

やがて、顔を上げて、雪兎は言った。


雪「俺、行きます。連合国へ」

火「雪兎さんっ!?」
リ「あなたっ、正気なの!?

連合国に行けばどうなるか分かっていってるの?」

雪兎に詰め寄り、どうにか引き留めようとするリリィー。

だが雪兎は首をふり、扉の前まで歩いていく。

火「雪兎さんっ待って下さい!!

学園長っ!雪兎さん、連合国に行くと、どうなるんですか!?」

リ「まず会議にかけられる。そこで、罪の重さを測るの。

有罪の場合わ、その罪に見あった罰を下されるわ。

でも雪兎には、反政府軍に居たというデメリットがある。

それに雪兎は連合国の騎士【ケイ】よ。

連合国を守る立場の人間が裏切ったのだから、有罪は免れないでしょうね………。
拷問にかけられ、終身刑を受けるか、最悪死刑に処されるわ……」


火図の顔から血の気が引いていく。
顔を真っ青にし、雪兎の背中を引っ張る。

雪「火図くん……っ」

火「ダメだ、行っちゃっ!きっと、殺されちゃうよ〜っ!」

雪「…………、大丈夫だよ……」

よしよしと火図の頭を撫で微笑むと、雪兎は扉を開ける。

扉の向こうには、さっきまで居た筈の女子生徒の姿はなく、代わりに、連合国の国旗が刺繍がされた軍服を着た、連合国の兵隊が、雪兎を捕らえるため、わざわざ学園まで赴いてきたのだ。

リ「ちょっとっ!あんたたち!

学園への不法侵入は、法で禁止されてるはずじゃないの!?」

「我々は政府公認の騎士です。
この学園には、聖軍に反逆する反政府軍の兵をかくまっているそうじゃないか?

法は国を守るためにあるもの。
秩序を乱すものを裁くためには、その様な小さな法は無効にされるのは当然だっ!」

リ「きゃあっ…!」

火「学園長っ!……あんたらっ、女性に何すんだよ!?」
政府の騎士に、ドンと押し倒されるリリィー。
火図は慌てて駆け寄ると、リリィーを押した騎士に睨みをきかせる。

その態度が気に入らなかったのか、騎士は火図の顔面を足蹴にした。

火「あ゛っ――っ!!」

「薄汚い犬の癖に調子こいてんじゃねーよ!」

リ「―火図っ!」

雪「―!」

火「ぐう゛ぅぅ゛う゛ぅぅっ〜……」

鼻を押さえ、その場に踞る。
鼻からべっとり血が垂れてきて、顔とか手や服、廊下の絨毯に染みをつくる。
廻りに居る騎士達は、止める事もせず、火図達の様子に大笑いする。


リ「あなた達、今何したか理解してるの!?

こんな小さい子の顔に蹴りを入れるなんてっ!」


火「ぃたっ―いたぃっっ―――………!!」
リリィーがハンカチで鼻を押さえる。


「小さい子?俺達から見たら、ただの約たたずの猿にしか見えないぜ?
なぁ皆っ!?」

「おぅよっ!」「こんな約たたずの為に国金を使うなんて、まじ勿体ない………国金泥棒は国のために死ねっ!」

便乗し仲間の騎士も声を上げる。

悔しさと痛みで流れる、涙で霞む視界の中に雪兎の姿をとらえる。

今にもマジギレしそうな顔で、拳をブルブル震わせていた。

だが雪兎がキレる前に先にキレた奴が一人。
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