短書

□くちなしの花
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――――now time


一人歩く夜道は暗く、寒い


一歩一歩踏みしめるたびに情事の後の気だるさから遠ざかれる気がして、自然と文弥の歩く速度が速くなった


(何をいまさら…)


恋するとはこういうことだと思う

過去に忘れてきたものをいまさら健斗に抱く



かなわないことなどわかりきっている


体の関係だけでも築けたことはとかったのかもしれない



いや、そんなのはただの言い訳だと知っている



(俺は傷つきたくないだけ)



誰よりも知っていた



思いを抱くだけで…

いや、思うことすら許されなかった


ただ、ともにありたいと思っただけなのに


過去の自分は恋することに罪悪感すら感じていた


だったらいっそ恋などしなければいい

思いなど抱かなければいい




それはただの逃げだったのかもしれない


でも、それ以上に傷つくことにつかれていた






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