短書
□(タイトル未定)
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正直自分と関係の薄い人間からの何とも言えない視線は嫌だ
世に携帯末端が普及した現代、陰口はそんなところにも広がっていた
僕と大地が屋上で話している様子を撮影した写真がクラスのページに張られていた
誰がとったかはわからない
ただ、写真を見る限り屋上の一つ下―――4階―――の渡り廊下周辺であると推測できる
正直、こんな状況で大地と会うことはためらわれる。どうしたものか…。残念ながら僕には抵抗するすべがない。
悪いこととは重なることで、僕が屋上に行くのを自重して2日。昼休みのことだった。
教室で一人さびしく弁当を広げていると、扉のほうが騒がしくなった。僕は別段気にもせず黙々と弁当を異に収める。
(いつもなら屋上に言ったけどな〜。大地いるかなぁ・・・)
「美鶴」
反射的に顔を上げるとそこには大地がいた。
一瞬にして血が下がっていく。
(まずいっ)
「これ」
そういって大地が差し出してきたのはおととい僕が屋上に忘れた小説だった。学校の図書館から借りているそれは、なくて困っていたものだった。
「ありがとう」
そういいつつ大地から本を受け取る。ただし、うつむきつつ。
(ダメだ。下手に仲良さそうにするとあいつらの思うツボだっ)
「美鶴?」
そんな状況を知ってか知らずか大地は気遣わしげにかがみこむ。
「な、なに?」
伝わってくれ…。
「…」
「…」
無言の応酬
―――カシャッ
音がしたと思った
近くにいたクラスメイトの盛っていたケータイから。
(――――っ)
周りからはやし立てる声
ただ、それは一瞬のことだった
大地が沢口―――クラスメイト―――の手首をひねりあげた。
「ゔ…い、―−っ」
その横顔はいつも僕の見る大地の顔じゃなくて、怖かった。
「消せ」
聞いたことのない声で、見たことのない表情で。
いつの間にか教室は静まり返っていた