寸書

□1ページ物語
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世界、平和論。

前のお題僕らは非日常を求めているの続き的な感じでもあります。よろしければそちらもどうぞ。



僕、小松将太は人間だった。日本人だった。学生だった。



そう、あくまで「だった。」つまり過去なのである。



「ねぇ、エリア4の惑星が聖英値上がってるんだけど」





神は楽そうと思っていた。みんなからあがめられて、好きなことして・・・。実際は責任重大な、それでいて残業だらけの仕事だった。





「はい、そちらは只今確認しております。・・・しかし、このままですと手を下さなければならなくなるかもしれません・・・。」



―――手を下す

天災を起こす。

ひとえに天災といっても様々だ。地球でいうところの地震や洪水なんかはちょっとした天災だ。その上が隕石の衝突、そして惑星間の衝突・・・。つまりは地球をなくすということだ。





「せめて聖英値が900まで下がるとね〜、いいんだけど・・・、無理かなぁ」



聖英値とは僕がいる、世に言う「天界」にどれほど環境が似ているかで決まる。200までが上界、800までが中界、それ以上が下界だ。



僕は、地球はそこそこきれいだと思っていた。それに海が多くを占めるから、人間が汚した陸地を考えても中界だと思っていた。しかし、僕の部下――イース――が前にも告げたよに、地球は下界だった。



そう、人間は海までも汚していた。いや、人間にその気がなかったとしても汚れていたのだ。



地球は今瀬戸際にいる。



聖英値が1000を超えると手を下さなければならない。地球は900から1100を行ったり来たりしている。今はまだ小さい天災で抑えることができた。しかし、もうそれも難しくなってきた。



少ない年月ながら、もともと僕が生まれ、育った地球だ。それなりの愛情はある。どんなに小さくても天災が起きれは人が苦しみ、なくなる方もいる。



間接的であれ、人を殺すのはためらわれる。僕がすでに人間でなくても。





「将太様。地球のほうはどうなさいますか。そろそろ、手を下しませんと・・・、ほかに示しがつかなくなります。」



イースは僕の葛藤をわかっている。どうにか期限を延ばしてくれていたが、もう、ムリらしい。





手を下すこともまた愛情なのだ。







聖英値が下がりきると惑星は死ぬ。ただ、死ぬのではなくほかを巻き込みながら、苦しみ死ぬのだ。だから、神は手を下す。少しでも被害を少なくするために。





「わかっている・・・。わかっているんだ。」



そういいながら僕は神災認書(天災を起こす時にかく書類。これがないと天災は起こすことができない)を出した。





―――どうするか





惑星を生かしたい



人間も生かしたい





矛盾していることは百も承知だ。



これをかなえるにはリスクがいる。





人間から地球を奪う。







生物とは面白いもので、適応能力を持つ。



人間はその恵まれた科学力を持って他の惑星に行くのだろう。







人間にしたらそれができるまでに、優に100年は必要であろう。ただ、神である将太からすればそれは短い期間だった。









「はぁ。しょうがない、か・・・。帰れないとわかっていても、帰る場所がなくなるのはさみしいものだな」



僕のつぶやきを聞き取ったのかイースがこちらを向く。



「将太様は悲しいかもしれません。でも、地球を殺さないことで人間は生きることができる。生物は生きられる。人間が移った先に命をつむぐ。彼らに新たな故郷を作ることができます。」



イースには帰る場所がない。彼女も遠い昔に故郷を失っている。



つらさや悲しさは十分理解しているのだろう。



彼女の言葉は優しい。





「じゃぁ、僕も故郷がなくなってしまうから、僕とイースの故郷は天界にしようか」





人間にとっても、神にとっても心のよりどころがそこにあればいい。









【END】



ん〜、世界、平和論・・・なんですかね?世界が平和というよりも地球が平和という感じになってしまいました。



そして、まさかの将太君登場。まさか、まさかでした。



故郷っていうのは、心のよりどころなので、必ずしも場所でなければならないわけじゃないですよね。そんな感じです。
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