短書

□くちなしの花
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ゆっくりポツリポツリ本当に溢れ出すように話す健斗



「文弥が、ほかのやつと…、やってんのは……知ってた…」


「ん」


自分と付き合ってると思っていた相手が他と関係を持っていると知った時彼は何を思ったのだろう



「俺も…、浮気してやろう……って思ったけど…―――――できなかった」



苦しんでいたのだろう



「初めは普通に話していたのに…、どんどんやるだけになって…。」



俺が自分の気持ちに気づかないために、自分を守るためにしたことはこんなとこで健斗を傷つけていた




「…なぁ気づいてた?もうすぐで一年」



何がだろうなんて思わなかった

こっそり俺も数えていたから



あぁ、健斗と会った日も目の前の公園にあったくちなしの花は咲きかけていた

雨に濡れて…でも花は純白でどこか美しさを感じさせた




「知ってる…。知ってる…。」



「…っから、だから…、なんか用意しようと…、ぉもって」




ことばは続かずとも、その先はわかった



本当に健斗は浮気などしていなかったのだろう


「…ご、めん」


何度誤っても足りない



文弥の首に顔をうずめていた健斗が不意に顔を上げた



息がかかるほど近くにある健斗の顔は目じりが少し濡れて、少し困ったような顔をしていた



「文弥。」


そう文弥を読んだときにはいつもの男らしい顔に戻った


「覚えてないなら…、今言う」



数秒の沈黙


「俺とつ「待ってっ!」…っ、え…」



何となく、何となくわかる

健斗が言うセリフは



でも、健斗が言うのは違う



覚えてなかったから言い訳じゃない



はじめ伝えたのが健斗だったなら、今は俺が言わなくては


言われるだけではいけない





「俺は…健斗が愛してる」




きっと、他人が聞いたらこっぱずかいいセリフかもしれないけれど、意外とすんなり口からでた




少し健斗の目じりが下がり文弥を少し引き寄せる



「俺も」




ことばと同時に健斗が文弥を抱きしめる





そしてそっと文弥の耳元で、文弥にだけ聞こえるように、優しく囁く




「愛してる」







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