短書
□くちなしの花
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雨の降り続く日々が少なくなり初夏の日差しが混じり始める
公園にあるくちなしの花はその身を美しく純白に開花させる
その姿は一心に何かを伝えようとする姿で、香りは人々に安らぎを与える
緑に映える白はいずれ黄に変わり懸命に咲いた花は散りゆく
しかし、ここに散らない花が一つ
「健斗…」
それは何気ない日常の中
「なに?」
振り返った健斗にキッチンにいる文弥はただ微笑み返すだけ
(あぁ、幸せだなっ…)
「?」
不思議そうにしていた健斗だが、少し目じりを落として笑う
「文弥」
初夏の日差しがまぶしかった