短書
□くちなしの花
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「ねぇ、お兄さん」
初めに声をかけたのは文弥だった
「隣いい?」
健斗が肯定の視線を送ると文弥は静かに腰かけた
かわす言葉は少なくとも、そこは落ち着いた空間だった
「この後暇?」
そう聞いてきたのは健斗だった
それが合図だったように二人の間の空気が変わる
ただ、文弥がいつもと違ったのは酔っていたことと、普段以上に健斗に興味を持ったこと
理由なんてなかった
普段ならホテルに向かうところを、なぜか自宅
その上、普段なら絶対に行わないアドレスまで交換する始末
―――あえて理由をつけるなら酔っていたとでも―――