短書
□Uoham
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長い、長い争いだった
建物や作物の被害はもちろんだが
何より人々の心が疲れ切っていた
30年以上、正確には36年に及ぶ争いはバラックとノイヤーに甚大な被害をもたらし、唯一進んだのは魔術による攻撃法、防衛法、そして、黒魔術…。そこに、一種の魔術革新がおきていた。
この長い争いに終止符を打ったのがバラックの太子とノイヤーの新王であった。
そして互いの国は未来永劫犯されることのない条約を結んだ
そして世には平和な時が流れ始めていた
バラックとノイヤーの主な争いの種となっていた聖地エリードは今、どちらの国にも属さない土地とされた
そしてそこにはバラック、ノイヤーと関係なく多くの人が集まった
元来、おさめる国が変わるたびにエリードの人々の国籍が変わっていたので、エリードに住む者にはどちらの国、という考えはなかった
そのため、エリードは不可侵地区になってからも多くの流れ者が集まった
人が行きかうところは栄る
エリードにある主な両国施設は元老院(政治的会議などに使われる)、始まりの書(人々の起源にまつわる史書をおさめる図書館)、エルダ孤児院を代表とする多くの孤児院、エリード学園、そして、【エ・ラドミエカ】…
エ・ラドミエカ…
始祖神マドゥーク=ラナが表れる地として、何百年、何千年の時を守られてきた
―――と、まぁ前置きはこれぐらいにして
「はぁ…、ここかぁ」
そこには、数年前たてられたばかりの、エリード学園の正門
「俺、大丈夫かぁ??」
一抹の不安を抱きつつもメルド=ラナは門を進んでいった
彼を歓迎するがごとく鳥が、草花が、自然が揺れ動いた