短書
□(タイトル未定)
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陰口というのは、陰で、つまり本人のいないところで言うから陰口であって、
「邪魔」
「退けよ」
本人の前で言ったら、それはもう陰口ではない。
「あ?うっせぇな。てめぇらがうせろ」
なぁんて、僕が言えるわけもなく…、
「…すいません」
こういうので精いっぱいだ。
「おい、聞いた?すいません、だってww」
「え?何か言った?美鶴く〜ん?」
奥歯をかみしめ、上履きの先を見る。
(大丈夫、大丈夫。泣かない。)
「すいません」
声は少し震えたが先ほどよりは大きな声で言えた。
そして、僕はそれを言い終えると同時に少し先にあった階段を駆け上がる。
後ろからは馬鹿にしたような笑い声が聞こえる。
あと少し―――
残り3段の階段を一気に駆け上がり扉を開ける。
一面に見えるのは美しい青空。
今、この空をここで見ているのは僕―――
と、もう一人…。
「大地!」
扉の上、屋上でも人気は高いところに大地はいた。
根本は黒く、毛先は赤い髪。耳には痛そうなほどピアスがある。制服は着崩されていた。ただ、元がいいだけにやけにその姿が道に入ってた。
「あ?…美鶴か」
「また、今日もここにいたの?」
梯子を上りながら訪ねる
「あぁ」
ぶっきらぼうな返事はいつものことなので無視
「留年するよ〜」
「しねぇえよ」
やっと登りきった上に大地は寝そべっていた
そっと近づき、覗き込む。
「授業出ようよ〜」
「…」
ぐるっと、大地は僕に背を向けた
僕には聞こえてしまった。大地が『あいつらも、俺がいないほうがいいと思ってる』と…。