短書

□(タイトル未定)
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大地は僕とは違って、正真正銘「陰口」を言われる人だ。ただ、それは雰囲気やちょっとした立居ぶるまいから本人に伝わってしまう。ゆえに、大地は一人だった。



入学してすぐ、大地は暴力事件を起こした。実際は、彼のせいではないのだが、一度張られたレッテルはなかなか消えない。大地の場合、その容姿も助長させた原因かもしれない。



そのせいで、クラスでの居心地が悪くなり、彼はよくここ――屋上――で過ごすようになった。



と、ここまではあくまでも僕が彼からどうにか聞き出したことだ。





はい、いいね、そこの君。質問だね。え?なんで僕と大地が知り合いか?そうそう、それを今から説明しようと思ってたんだ。





僕はその日もいじめられていた。陰口なんてかわいいものじゃなくて、僕の体育着が切り刻まれてた。



それが初めてだったから、正直かなりショックを受けた。もう、なんかどうでもよくなって、授業なんてどうでもいいや、って思った。ただ、僕にはいく当てがなかった。今日は平日だから、制服で町にいるのもあれだし、家には母さんがいるし…。



そうやって思ってたら何となく、ただ何となく足が屋上に向いてた。



自殺しようとか、そんなんじゃなくて。ただ一人になりたかった。







扉を開けた先は、今日と同じぐらいきれいな空だった。



それを見たら、なんかどうでもよくなったのを覚えてる。



悲しいとか、つらいとか、なんか、どうでもいいやって…。





ガタッ―――





はっとして振り返ったらそこには何もなくて、正直「っえ?」って思った。



そしたら、そのうちガタガタッてリズムよく音が鳴って黒い塊…、もとい、大地が表れた。





「…」



「…」





息をするのを忘れたように僕と大地は視線を交差させたまま、互いに動かなかった。いや、僕の場合動けなかった。



その時僕が知っていた大地は、あくまでうわさで聞いた「怖い人」だったから、正直やばいって思った。





「―――、あ。と…。す、すいませんっ!」





はっとして、あわてて回れ右。いざ、走り出そうとしたら大地の手が僕の方にがっちりと



(ひいぃぃぃ!!)





まるでロボットのように僕は振り返った。



(あ、あれ?怒ってない??)





そこには想像と違った顔があった。





「別にかまわない…。」







そういって、大地は僕を追い越し扉の先に消えていった。









その時からだった。僕が何かあるたびに屋上に行くようになったのは。

大抵そこには大地がいて、でも何も聞かなかった。



それが僕には心地よかった。







あるとき、僕はトイレで水をかけられた。





その時も屋上に行った。





大地は何も言わずに、自分の上着とタオルを僕に渡した。





ふと、僕の中の何か糸が切れたように、僕は大地にすがりついて泣いた。

無性に悲しかった。







そうして僕と大地の奇妙な関係は始まった。













大地は口数こそは多くはないが、僕が話せば必ず聞いてくれた。





あるとき大地が「美鶴はいじめたくなる」なる発言をしたとき、僕は「は?」って感じだった。



でも、よくよく話を聞くと納得した。



結局、僕は大地からどうしたらいじめられないのか教えてもらい、最近やっと大きないじめが減ってきた。




だから、僕にとっていつの間にか大地はなくてはならない存在になっていた。





これが友情なのかは、大地が僕をどう思っているかによるけど、知り合い程度には思ってくれてるんじゃないかな?まぁ、これは僕の勝手な想像だけど・・・。







でも、最近僕と大地が屋上で会っていることが周りに気づかれてきた。





それがどうってわけじゃないんだけど…、なんか、何となく嫌だなって…。







「おい!」



加減されていない力で肩をつかまれた





痛い…





正直、むっとしたけど、それを顔に出したらまたなんか言われると思い、ぐっと我慢







「お前さぁ〜、斉藤の何?」





斉藤っていうのは大地のことで



てか、第一になんでお前呼ばわりなんだろう。なんで彼はこんなに上から目線なのだろう。



何って聞かれても困る。さっきまで語ってたんだよ、それについて…。





「と、友だ…、ち?」



首をかしげつつ言えば相手は爆笑中







「wwパシリの間違いだろww斉藤かわいそ〜」





とやかく言うなら大地に聞けばいいだろ。それもできないくせに…。









悔しい







ぐっと下唇をかみしめ耐える





自分でも、なんでこんなに悔しいのかよくわからないが、こんな何も知らない人間に僕と大地をバカにされて嬉しいわけがない





できる限りの力で肩の手をはがす







何も言わす、僕は無言で彼らの元を去った







「あ、おい!」



「鈴木!」





うるさい
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