短編
□ずっと
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−昔−
「家康!今日は二重跳びができたんだぞ!」
すごいな三成!よくがんばったな!
「フフ、家康…」
三成はワシを強く抱きしめた。
ワシは家康、三成に大切にされている人形だ。
動いたり話したりする事はできないが一応自分の意思は持っている。
三成は毎日学校であった事や今日思った事を報告してくれた。
ワシは話せなくても三成と居られて大切にされるだけで幸せだった。
だが、いつからだろう
それだけでは足りない、三成と話したり笑い合ったりしたいと思い始めた。
だが、昔ならまだしも今となっては多分無理な話だろう。
三成は11歳になった辺りからワシに構ってくれる事はなくなっていった。
仕方がない事だな、人は成長するものだ。
今は整理用のダンボールに詰め込まれて三成の姿さえ見えない。
ダンボールに入れられて何年が経ったんだろう。
久方振りに暗いダンボールの中に光りが差し込んだ
それと同時に覗いた三成の顔はすっかり大人に成長していた
「家康…」
三成はワシを見付けるとそっと持ち上げ少し積もった埃を掃って抱きしめてくれた
懐かしい温もりに安堵したのも束の間、三成はワシをゴミ袋であろう袋の中へ入れた。
三成!?なんでだ!!あんなに一緒にいたのに!!
だが三成にワシの声が届くはずもないワシは他のゴミ達と一緒にゴミ処理場へ運ばれた。