短編

□リグレットメッセージ
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言い伝え、伝承、昔話…人間が自らの手で生み出した創作に希望を見出だすのは何故でしょうか?
そこには、なにも救いなどありはしないのに。

ある日の夜。一人の少女が海辺にたたずんでいました。彼女もまた、『言い伝え』という名の希望にすがった人間でした。


少女、三成はその手にガラスの小瓶を持ちながら海を見ていた。

三成が今眺めている海には昔からとある密かな言い伝えがありました。

それは『願いを書いた羊被紙を小瓶に入れて海に流せばいつの日かその願いは叶う』といういかにも抽象的な言い伝えでした。

ですが、彼女はそんな言い伝えさえも信じてこの海へ訪れていたのでした。

三成は海を見ながら静かに昔…とはいってもほんのつい最近の事ではあるが家康といた日々の事を思い返していた。

「思えばお前はいつも私の為に何でもしてくれていたのに私はいつも我が儘三昧でお前を困らせていたな…」

三成自身が思い返してもあの頃の自分は傲慢でいつも自分の事しか考えていなかった。

いつも彼女の願いを叶え、そしていつも笑顔で支えてくれてくれていた家康はもう帰らぬ人となっていた。

だから最後の願いをこの海に届けてもらおうと彼女はここへやって来たのであった。

三成はそっと小瓶を海へ浮かべた。調度引き潮の時間の海へと浮かべた小瓶は見る見る内に海の彼方へ流れていきました。

小瓶が流れていった方を見ながら三成は今更ではあるが今までの行いを後悔し、涙を流していた。

そう、彼女が己の罪に気が付くのはいつもすべてが終わった後であった。

彼女の願いを込めたメッセージは水平線の彼方へ消えていてもうその形は確認できなかった。

彼女の小さな願いを乗せた小瓶が亡き彼へと届く事を彼女は祈りました。

「もしも生まれ変われるならば−−−…」


救われたと思うのは、彼女の思いあがりでしかありません。『罪の意識』は海に流せても、『罪』そのものは決して流せるものではないのです。

まぁ、彼女が後ろを振り向かない決意をしたことは、よかったと思いますが…
 

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