短編
□ぜんまい仕掛けの子守唄
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-家康-
目が覚めた時にワシは黒く塗り潰された何も無い部屋に一人でいた。
そこには何も無く、何の音もせずワシはその何も無い空間が恐ろしく一人暗闇の中で震えていた。
ふと天井を見上げれば何故か穴が空いておりそこには巨大なぜんまいがあった。
何とも無しにそのぜんまいを見つめていると突如その先から得体の知れない不気味な声が響いた。
「罪深い青年…アンタは永遠にこの部屋からは出られねぇ…。」
罪深い…ワシは何か思い『罪』を犯したのだろうか…。
少しの間自分が何をしたのか考えれば瞬間的に自分が犯した『罪』を思い出した。
自分の犯した『罪』、それらはどう償っても償いきれる物ではなかった。
自らが犯した『罪』に気付けばこの先に待っている結末なども自然と見えてくる。
もう『あの頃』には戻れない、そしてもう『君』にも会えない。
ふと手足に違和感を感じ気付けばそこには先程まではなかったはずの手枷と足枷がはめられていた。
手枷は赤くその色はきっと誰かが流してきた血の色だろう。
足枷の色は青くその色はきっとワシが犯した『罪』によって誰かが流してきた涙の色なのだろう。
ふと、天井よりも遥かに高い場所からるりらるりらとどこか心安らぐ子守唄が聞こえてきた。
この唄を歌っているのは一体誰なのだろう。
気になってもワシにはそれを確認する術などは無い。
ワシには何も無い空間で静かにその唄を歌っている人物を浮かべながら唄を聞いている事ぐらいしかできなかった。